最高裁が高裁判決を「破棄」、高裁へ差し戻しというものでした。

 

私は今まで今回の件は「せん妄」という医学的な現象に関する無知を認めず、あるいは無知であったことに気づいたのちにも自らの過ちを訂正しなかった警察と司法により、無実の医師を実名逮捕し、拘留、起訴から長期にわたる裁判の禍の中で苦しめたというのが真相だと思うと書いてまいりました。

さらにこの中でこれらの根本的な原因はこれらを行っていた警察・司法の医学的・科学的リテラシーの低さ、尊大な特務感覚と述べておりましたが、差し戻し判決をみて、この問題を警察・司法全体の問題のように述べていたことは誤りであることに気が付きました。

最高裁判決では全員一致での差し戻しとなったと聞き及ぶに至り、きちんと判断される司法は存在することを自覚し、そもそも一審は無罪であったことも思い出しました。

町では警察の皆様のご活躍により平和と秩序が保たれているのも厳然たる事実であります。今までのブログ内容を見られて気分を害されました警察・司法の関係者の方がいらっしゃいましたらこの場を借りてお詫び申し上げます。

 

それではだれがこの無実の外科医を苦しめた元凶なのでしょうか?実名報道で逮捕した所轄の警察署なのでしょうか?それとも「せん妄」の可能性について考慮せずに公訴提起をした東京検察庁なのでしょうか?理解不能な二審判決をくだした朝山芳史高等裁判所裁判官なのでしょうか?

差し戻されたということは二審判決に大きな問題があったということでありますゆえ、もしこれが無罪となった時には再発防止のためにも、各プロセスを詳しく振り返りだれがどの時点で何を根拠にどういう判断をしたのかを明らかにしていく必要があると考えます。

 

今回の最高裁判決内で三浦裁判長は「原判決(高裁判決)では、被害女性のせん妄および幻覚の有無について、検察側専門家の見解は医学的に一般的なものでないことが相当程度うかがわれる」と述べていました。

この点が再度審理されるとしたときには、検察側専門家の井原裕先生の御説明を再度拝聴してみたいと思っております。

是非、次回は1935年のアルコール酩酊にともなう判断能力と責任能力の分類を術後せん妄に無理やり当てはめた医学的妥当性の低い事実解釈やLINEを操作したことが、覚せいしていた動かぬ証拠といったような、多くの外科医が何度も見たことがある「せん妄」に対して明らかに間違っているといえるような理論的根拠ではなく、井原裕先生が主張された「せん妄ではない」という説明をもとに朝山芳史高等裁判所裁判官が下した二審判決を不可解で理不尽と考え、名前を挙げて疑義を表明している全国の医師が納得できるようにお願いしたいものです。

 

 

(乳腺外科医師の高裁判決に対する日本医師会、日本医学会の声明に賛同する医師の会)