- Trouble Will Find Me/National
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The National、通算6枚目のアルバム。前作High Violetも素晴らしい作品で、確かアメリカでもかなりのセールスをあげたと思う。こういうアルバムが売れるって、なんかすごいなぁと思う。だって、日本のオリコンでこんなシーン日和見感ゼロの作品が上位にくることありますか?
で、3年ぶりの新作となるわけですが、これが本当に素晴らしい。
オープニング、力強いアコギで始まるI Should Live In Saltから引き込まれる。静かに進行していくメロディーラインを丁寧に歌い上げていく。バックの演奏もそれについて行くかのように、過不足のないエモーションを放っている。自分たちの今まで、そしてこれからを確かめるように歩いて行く。そんな雰囲気を漂わせる曲だ。
続くDemonsはさらに深い潜行を見せ、前作のセールス的成功に左右されることなく、自分たちの世界観を貫いていくというファイティングポーズを見せている。
3曲目Don't Swallow The Capはややアップテンポにメロディーをリフレインしていくが、ピアノやストリングスが絶妙のタイミングで入ってくることで、スリリングさをもたらしている。4曲目Fireproofで冷え冷えとした雰囲気を作りつつ、リード曲である5曲目Sea Of Loveでラウドに一気に上り詰める。
そして6曲目、Heavenfaced。彼らにしては、やや叙情的すぎるスロー・ナンバーであるが、この曲を挟んだ後半は前半よりもさらにダークな部分に切り込んでいくナンバーが多い。
一見シンプルさを基調としたギター・ロックのように感じるが、聞き込むと音のレイヤーにはかなり力を入れていると思う。ギターの音色に奥行きがあるし、ストリングスやエレクトロを意外なタイミングで使ってきたりもする。聞きやすさや、より感動的にすることを求めるのではなくて、曲のフォルムに忠実な音選びをしている印象。
彼らの音楽の根底にあるのはストイックさ。信頼できるものは己の感性であることをこのバンドはよく知っていると思う。どこまでもストイックに、迷わずに自分たちの「音」を紡いでいく。それが全編にわたって貫かれているように思う。
ただ、コマーシャルな音作りを彼らはとっくに捨てている。その中で、得ることのできた「自由」を楽しみながら、職人的なロック・アルバムを作っているのかもしれない。そういう意味では、「ストイック」という表現は少々合わない。でも、「USインディー、かくあるべし」と、それだけは言い切れます。
いずれにせよ、素晴らしすぎるアルバムです。リリースされてからかなり経ちますが、相変わらずかなりの頻度で聴いています。個人的には「Boxer」よりも好きなくらいです。
(02/08/13)