Bloodsports/Suede | Surf’s-Up

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音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

ブラッドスポーツ(初回限定盤)(DVD付)/スウェード



¥2,980

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 Suede再結成後初のアルバム。


 一昔はロックシーンにおける「再結成」は博打のようなものだった。バンドの歴史を自らの手で「終わらせる」。それは一つの美学であり、絶対的な価値観として長年確立されてきた。


 しかし今では止まった時計の針を「再び進める」ことが、クリエイティブなチャレンジととらえられるようになった。結果、かつてよりも無残な「再結成」はあまりないような気がする。過去の失敗例を反面教師として、実に「たくましい」姿を見せているバンドが多い。


 あのレッド・ツェッペリンも、ライブエイドでフィル・コリンズのドラムで数曲やったそうだが、かなり悲惨なものだったらしい。たぶん、自分もテレビで見たんじゃないかと思うんだけど、全く記憶にない。それが、2007年。まさに不死鳥のごとき勇姿を見せることができたのは、入念な準備を行ったからにほかない。なにせリハーサルさえ作品化してしまったのだから。


 Suedeは2010年に再結成。ライブやフェスを中心に活動し、満を持してのリリースなわけだが、このバンドの途轍もない「したたかさ」を感じさせるアルバムになっている。


 「したたか」というと言葉の印象は悪いかもしれないが、このアルバムの素地になっているのは「経験」。


 ブレットが「僕は男性経験のないバイセクシャルだ」と発言していたデビュー時のキワモノ的な扱いから、王道感と独創性が融合したような骨太のバンドへと成長していったスウェード。希有な存在感を生み出したのは、まさにこの頃のマスコミの洗礼だったり、音楽的な格闘であったと思う。


 そういったハードコアな「経験」があるからこそ、清廉な「志」だけで勝負しようとするようなことはしない。全方位的なパワーを身につけ、ねじ伏せることのできるバンドを再び立ち上げたということなのだと思う。



 そしてその結果、リスナーが彼らに求めるものがすべてそろっているかのような素晴らしいアルバムが完成した。Barriersのイントロを聴いた瞬間に、「スウェードォーーーー」と大雪山に向かって叫びたくなった。勢いを失わないようにとたたみかけられるSnowblindも、目が眩むほどエモーショナル。メロディーのキャッチーさも全く隙がない。そしてIt Starts And Ends With Youはライブではシンガロング必至のナンバーになるだろう。


 4曲目Sabotageあたりから、青白い情念を燃やすようなヘヴィーな表現が出てきて、後半は、ブレッドがソロ時代に鍛え上げたドラマチックなヴォーカルが堪能できるナンバーが多くなっている。中でもWhat Are You Not Telling Me?、Faultlinesは秀逸。   


 昔のようなセクシャルな面はあまりなく、むしろ3rd「Coming Up」あたりのエモーショナルなロックをガンガン繰り出す。しかし、「バーナードがいた頃が好き」っていうリスナーも、軽くいなせるようなナンバーを所々に忍ばせているあたりが心憎い。良い具合の「リセット感」があるからこそ、こういう堂々としたクラシカルなロック・アルバムを作り上げることができたのだと思う。


 (15/07/13)