- Strapped/Soft Pack
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米サンディエゴのバンド、The Soft Packのセカンド。
2010年にリリースしたファーストは、ストロークスや初期R.E.M.の良質な遺伝子を受け継いだロックンロール・アルバムで、かなりよく聞いた。小難しいところが一切なく、切れの良いビートにつんのめるようなメロディーラインがとにかく心地よい一枚だった。
オープニング・ナンバーのsaratogaで思わず頬が緩む。うねるベースラインに、無愛想なカッティング・ギター、吐き捨てるようなヴォーカル。「そうそう、これこれ」とつぶやきたくなる。脳天にガツンとくる、直情的なナンバーだ。続くドライな質感の疾走ナンバーSecond Look、ぶっきらぼうなギターソロがかっこいいThey Sayもシンプルなロックンロール・ナンバーで、ヒリヒリする様な世界観を描いている。
と、ここまでは思った。
しかし、4曲目Tall Boyからその様相は一変する。80年代っぽいシンセ、ゆるやかなリズム。「おや?ずいぶん思い切ったな」とやや戸惑う。そして、5曲目Bobby Brown 。「なんじゃあこりゃあー・・・」なよなよヴォーカルにディスコティックなビート。とてもあのソフト・パックとは思えない。わなわなと戸惑いの震えがくる。
ドキドキしながら6曲目Chinatown。ここでまたロックンロール・モードが復活する。ただ、このギャップは何だろう?頭の中でなかなか整理できない。
そして、こんな調子でアルバムは制御不能な軌道で進んでいく。ティアーズ・フォー・フィアーズ(好きなバンドですが)みたいなナンバーもあったり、サックスとギターが入り乱れたインストがあったりと、アイディアを手当たり次第やった感が半端ない。
んー、どういうことだろう?
とたくさんの?があるアルバムだ。当然アルバムに入っている楽曲はメンバーがやりたくてやっているものだろうが、これは「バラエティー豊か」という範疇をいささかはみ出しているように思える。
つまりは、その「振れ幅の大きさ」にどうしても意識が行ってしまう。それ故に、楽曲の本質的部分が途中から刺さってこなくなる。これでは本末転倒だ。
ファーストで明確になっていた「シンプルなものだからこそかっこいいんだ」っていう主張。そこを曲げてしまったのはすごく残念。バンドのポテンシャル、そしてきっと作れたであろう傑作の片鱗。そういうものがあまりにも無造作に置かれていることが、余計にもどかしく感じる。
★★★(09/02/13)