Beacon/Two Door Cinema Club | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up
北アイルランド出身のバンド、Two Door Cinema Clubの2nd。前作「Tourist History」がいきなりミリオンを記録。ファーストでありながら非常に完成度の高いダンサブルなロック・アルバムであることと、当時のkituneブームも追い風となって多くのリスナーに支持された。


 2年ぶりになるセカンドの今作であるが、はっきり言うとさらなる充実を見せた作品となっている。基本線は前作とそれほど変わらない。ダンサブルなビートと切れの良いギター・ポップがバランスよくブレンドされている。ただ、前作よりはサウンド面で整理されたというか、無駄な部分がそぎ落とされた感がある。


 オープナーのNext Yearから即効性の強いひたすら上り詰めていくメロディーラインが登場する。そしてその高揚感を醒ますことなく、続くHandshake,Wake Upでもポップでメランコリックなメロディーの洪水で畳み掛ける。


 4曲目Sunでは「オーシャンブルー/ぼくはきみになにをした?」と焦燥感をモダンテイストなソウル・ポップで表現。ここで少し落ち着きを見せるかと思いきや、ここからまた数段ギアを上げる。熱情かつ攻撃的なギターがうなり、疾走するSomeday,シンセによりサウンドスケープをグッと広げるSleep Alone,そして祝祭感に溢れたThe World Is Watching、settleへと続いていく。


 まず感心するのは、メロディーの質の高さ。どの曲にもポップソングにふさわしいフックがあるのだけど、それをいかにダイレクトにリスナーに伝えるか、そこにかなりの重きを置いているように感じる。聞き手に届くまでに温度や速度が落ちないように、自分たちが鳴らしている音を少しのずれがないように感じてもらいたい。なんとなくだけど、そういう意志を感じる。プロデューサーは、ジャックナイフ・リー。R.E.M.の近作やU2など、いわゆるスケールの大きいロックのプロデュースで、実に良い仕事をする人だが、ここではTDCCのサウンドスケールを広げることはもちろん、メロディーの魅力を損なわないような厳選された音作りでも貢献しているように思う。


 エレポップなテイストが強い分、敬遠する人もいるかもしれない。僕も割とそういうタイプの人間なので、パッション・ピットとかアウル・シティーとか全くノータッチなんだけど、これは実にすんなりと聴けてしまう。


★★★★☆(08/12/12)