COME OF AGE/The Vaccines | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

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 The Vaccinesのセカンド。ジャケットは、これ、どうなんでしょう。「ジャケ買い」なんてしたことないけど、仮にやってみるとすれば、このアルバムは絶対買わないだろうな。なぜかというと、私、男のノースリーブが苦手なのです。とか、言いながら実は今年、自分がノースリーブ・デビューしてしまったのです。マラソン大会での暑さ対策として。もちろん普段は絶対着ません。なんかね、無防備な感じがするんです。タンクトップもしかり。


 すっかり話がそれてしまいました。アルバムの話を。ファーストである程度の成功を収めたバンドである。個人的には好きな感じであるものの、それほどのめり込まなかった。エネルギーをぎりぎりのところで制御しながら放出していくような、熱いアルバムであり、そのロックに対するアティチュードは断然支持するんだけど、楽曲の面で食い足り無さが少々あった。


 インターバルが1年程度と、ずいぶんスパンが短いので、延長線的な展開を想像していたけど、これが見事に裏切られた。何せ、1曲目No Hopeが実に清々しい。バズコックス直系のストレートなパンキッシュ・ロックンロール。なかなか説明しにくいんだけど、今回全曲をライブ・レコーディングしたせいなのか、ライブで発生する種類の生々しいグルーヴが感じられる。


その勢いのまま2曲目I Always Knewへとなだれ込んでいく。高揚感あふれるシンガロング・ナンバーだ。3曲目Teenage Iconもいかにも英国らしい疾走ロックチューンなんだけど、ひたすらつんのめっていくヴォーカルとギターが良い具合のシンクロを見せている。


 まず感じたのは、メロディーの充実ぶりだ。キャッチーかつUK ROCKのおいしいとこ取りみたいなAftershave OceanやラストのLonely Worldなど、非常にクラシカルなテイストが強くなったような気がする。それは単に懐古的ということではなく、長い年月愛されるような楽曲になり得ているという意味である。


よくラモーンズが引き合いに出されているけど、ポップさと性急なロックンロールを見事に結実させている面ではまさにそうだろう。


 そして、ファーストに比べると、ややサウンドの幅が広がった。特にギターサウンドはシャープさを失うことなく多彩な音色を印象的なリフに絡めている。このバリエーションの増加は、数多のロックバンドが陥りやすい「袋小路」にもなりうるところだ。そこに躍起になってしまうために、楽曲のクオリティーが落ちる、作品としてのフォーカスがぼやける。しかし、そういうところを彼らはあっさりと飛び越えてしまっていると思う。


 それは、ただ単純にファーストで見られた、やや一本調子でトータルで聞いたときの充足感に欠ける点を打開しようとした故の変化だったのだろう。そういう必然があれば、どう変化しても構わないはずだ。そのことを見事に証明している。幾分マイルドになった分、前作のエッジ感は後退しているが、確実に前進したことを感じさせる1枚。


★★★★(11/11/12)