The Shins、4作目のアルバム。サブポップからリリースされた前作「Wincing The Night Away」が全米2位と、インディ・バンドの作品としては異例の大ヒットを記録した彼ら。その後、メジャーへ移り自主レーベルを設立。そしてジェイムス・マーサ以外のメンバーがチェンジ。様々な変化を経て、今作のリリースにこぎ着けた。
個人的には2ndからシンズのことはすごく好きで、メロディーのポップさと捩れたサイケ感のバランスがとれた彼らの音楽性がこれほどまでに評価されるとは、アメリカはすごい国だと思った。たかがセールスであるが、あのバケモノばかりのチャートで2位になるっていうんだから。
前作からは5年のスパンがあるが、その間Danger Mouseと組んだBroken Bellsも素晴らしかった。いかにもブライアンな音世界の中で、ジェイムスのメロディーとヴォーカルは、聞き手の創造性に訴えかけるような力を放っていた。バンドが休止状態の中、満足のいく自己表現ができたことは彼にとって、またシンズを始めようという原動力になったのではないだろうか。
オープニングThe Rifle's SpiralはBroken Bellsでの経験を感じさせる、密室的ポップソング。シンズらしさを感じつつも、新しいステージに向かおうとしていることをにおわせている。そして、2曲目Simple Songの思いの外スケールの大きいメロディーとアレンジに度肝を抜かれる。しかもジェイムスのヴォーカルは非常にエモーショナル。おそらくライブではシンガロング必至であろう、キラー・チューンとなっている。驚きはまだ終わらない。3曲目It's Only Lifeもまたサウンド的にほとんどひねりのない泣きのラブソング。ここでもまたジェイムスのヴォーカルが冴えていて、情感豊かに大らかな恋心を歌っている。
全体的な印象としては曲のヴァリエーションが増えたと同時に、エモーショナルでダイレクトなサウンドスケープが目立つ。メロディーの質的には過去最高だと思う。ただ、元々メロディーメーカーとしては申し分のない力を持っているが、素直にメロディーの良さを生かせばいいところを、華美になりすぎているように感じてしまった。No Way DownやFall Of '82あたりの80's的なアレンジも新鮮ではあるけれど、もうひとつ魅力的には響いてこなかった。良くできているとは思うんだけど、グレッグ・カースティンのプロデュースがエッジを丸めてしまったのか。
ベストトラックはThe Rifle's Spiral。ラストのPort Of Morrowはアシッドなジョン・レノンで良い味出しているし、For A Foolなんか本当に良い曲なんだけどなぁ。セルフ・プロデュースでリアレンジとか、どうでしょう?
★★★☆(15/06/12)