米ロサンゼルス出身の3人組、Foster The Peopleの1st。すでに多くのメディアに取り上げられ、このアルバムも全米でスマッシュヒットを記録している彼ら。2010年に、今や彼らのアンセムナンバーとなっているPumped Up Kicksをリリース。これがメディアを通して話題となり、今年の3月に本作をリリース。それからさらに勢いは加速している状態だ。
このアルバム、デビュー作にして3人のプロデューサーが絡んでいる。ポール・エブワース、リッチ・コスティ、グレッグ・カースティン、何ともすごいメンツである。しかしながら、サウンドの鍵を握っているのはバンドの中心人物であるマーク・フォスター。楽曲の全ては彼が手がけており、プロデュース、エンジニアもつとめるほどの才人だ。
サウンドのテイストとして、よくMGMTが引き合いに出されているが、確かに彼らの1stあたりに近い雰囲気がある。ただ、楽曲のポップさはFTPの方が上だろう。ポップソングとしての起承転結がはっきりした楽曲が並んでいる。
全曲シングルカットできそうなキャッチーなメロディーの曲が並ぶ。それを彩るシンセの使い方もすごく心得ているというか、メロディーよりも音色やリフのキャッチーさが際だっているように感じる。
打ち込みを主体としたカラフルなサウンド、ダンサブルなビート、気持ちよいのは当然のことだが、聞き終えた後に残る、ほろ苦さのようなものが強烈に残る。ポップなサウンドとは対照的に詞は、やり過ごしようのない孤独感やいらだちにあふれているせいだろうか。
曲調だけは底抜けに楽しいこのサウンドは、そんなやり場のない感情を粉々にしようとするシュレッダーのようでもある。でも、いくらシュレッダーをかけても次から次へと放り込まれる「ゴミにしてしまいたい感情。やがてはシュレッダーがゴミであふれてくる。でも上からぎゅうぎゅうに押し込めながら、彼らはポップな機械音を奏でる。
それはとてもエネルギッシュな行為だ。そして、そのエネルギーがあるからこそ彼らの楽曲は光を放っている。
それはまぶしい光ではないけれど、それこそ燭台(torche)の灯りのように、暗い夜の中を照らし出している。
★★★★(23/11/11)