ワーキングホリデー/宮内優里 | Surf’s-Up

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 宮内優里のニューアルバム「ワーキングホリデー」。このアルバムを聴くまで、僕は宮内優里という人を知らなかったのだが、エレクトロニカの世界ではかなり知られた存在だそうで、高橋幸宏、高野寛、権藤知彦とのバンドTYTYのメンバーでもある。ライブでは生楽器とエレクトロを一人で操りながら演奏するらしい。また、ライブではその場で音をサンプリングすることもあるらしい。以前、フジでトム・ヨークが自分のヴォーカルをその場でサンプリングしループさせていたが、こういうのは今では普通にあるんですね。


 特設ページでは、このアルバムのことを「メロディトロニカ・アルバム」と表現されていたが、なかなか的を得ていると思う。明らかに構造はエレクトロニカ・アルバムであるが、YMO的オリエンタル風味なそのメロディーはとても柔らかく、日差しのように降り注いでいる。また、アコースティック系の生楽器とのレイヤーがそうさせるのか、無機質な音のはずなのに、どこか肉体的な質感を感じる。その感触が何とも良いのだ。YMOにも同じようなテイストを感じるが、演奏者の指使い、息づかいが音から感じられるのだ。


 このアルバムでは、アーティストとコラボしたヴォーカルものがいくつかある。そのできばえがどれも素晴らしい。中でも高橋幸宏との「Sparkle」、星野源との「読書」が秀逸だ。幸宏さんのは、今作の中で一番歌メロが生えている曲だと思う。「読書」は歌詞が素晴らしい。


 強烈な世界観を持っているというタイプの音楽ではない。が、聞き手自身の世界に入り込んできて、ちょっとした彩りを与えてくれるようなところがある。何とも心地よいアルバムであるが、音のエゴの薄さだろうか、ついつい聞き流してしまうこともある。でも、個人的には「聞き流せるアルバム」というのもあっていいと思うし、聴き方を限定するような音楽よりは良いかなと思っている。アーティストとリスナーの関係はともに自分に主権があると思っているくらいで良いと思う。


 ちょっと話はそれてしまったが、こういうメロディアスなエレクトロ・アルバムは非常に好みです。もっともっと注目されても良いんじゃないかと思いますが。ちなみに今日札幌でライブがあり、行こうと思っていたんですが、自分は結婚式参加のため行けませんでした。蛇足でした。


 ★★★★(12/11/11)