Hunger/Frankie&The Heartstrings | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

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 英国サンダーランド出身の5人組、フランキー&ザ・ハートストリングス(以下フランキーで)のファースト・アルバム。アルバムの帯には「英インディ・ポップに変化を起こすニュー・カマー」と書いてある。

 確かに今また注目を集めつつある英国新人勢の一つである。でもこのバンドを楽しむのに、そんな大げさなキャッチコピーはいらない。むしろ何もないところから聴いて欲しい。


 なぜならば、このアルバムが今のUKロックの時系列から離れたところにある音楽だからだ。目新しさとか、挑戦とかではなく、不変的でタイムレスな魅力を持っているからだ。


 アルバムのプロデューサーはエドウィン・コリンズ。まさに最高の人選であることは、おそらく聴けばわかると思う。


 まさにエドウィン・コリンズが在籍していたネオアコ・バンド、Orange Juiceを思わせるようないかしたポップ・チューンが並ぶ。小気味よいカッティング・ギターに、ちょっとナルがかったヴォーカル。まさにネオアコ直系のサウンドであるが、所々にThe Smithsの残像も浮かんでくる。


 このバンドの大きな武器は、やはりメロディーだろう。どの曲も口ずさみたくなるフックを持っていて、ライブでは合唱必至なんだろうなと容易に想像できる。すでにリリースされていた3枚のEPのインパクトが強くて、ほかの曲とのクオリティーの差が心配だったが、そんなことはなく、しっかりと粒を揃えた印象だ。昔のネオアコ系バンドのアルバムって、どの曲聴いても耳に残るというか、息つかせぬような「メロディーの乱射」があった。彼らもそれに近いくらいのものがある。


 基本シンプルなギターロックが好きな自分にとっては、嫌いなはずがない音。ただ、バンドのアイデンティティを感じるまでにはあと一歩といったところ。でも、そこに逆に将来性を感じる。ある雑誌のインタービューで、最近のUKの新人バンドと同列に取り上げられたことに対して、「絶対に息の長い活動ができるのは僕ら」と答えていたのが印象的だった。確かにそういう素質を感じる。


 あと、歌詞の青臭さがいいですね。


 ★★★★(23/10/11)