What Did You Expect From The Vaccines? | Surf’s-Up

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 英国期待の新人バンド、The Vaccinesのデビューアルバム。昨年はよく「UKロック不作の年」と揶揄されたものだが、今年はそれを挽回すべく、シーンの中で英国新人勢のプッシュが目立つ。このヴァクシーンズもその一つ。マニックスのニッキーや、ジョニー・マーも彼らを絶賛し、BBCのSound of 2011でも選ばれるなど、かなりの注目株である。


 不思議なバンド名ながらも、その佇まいを見ると明らかにパンキッシュな薫りを漂わせている。オープニングのWreckin' Bar (Ra Ra Ra)の見事なまでにストレートなロックサウンドに、予想通りの音かと思わされるが、アルバム全体の印象はパンクアルバムとは異なる。


 というのは、A Lack Of UnderstandingやWetsuitの様に直情的な感情が高揚していくようなナンバーや、Post Break-Up Sexのように切なくエモーショナルなナンバーがこのアルバムの中核を占めているのである。それでいて、決してとっちらかった印象はない。不思議な統一感がこのアルバムにはある。 


 ストレートでシンプルなギターサウンドは、楽曲のメロディーの良さを最大限に生かすように鳴っている。ちょっとスタイルは違うが、初期のR.E.M.やバズコックスあたりに共通するものを感じる。過去の素晴らしい遺産を学習しつつ、「今、鳴らされるべき音」を見事に作り上げている点で、新人の中でも一歩抜きんでた感はある。


★★★★(21/10/11)