The Horrors、3年ぶりの3rd。前作「Primary Colours」を今でも愛聴している自分にとっては、かなり期待を寄せていた新作である。
本作を制作するに当たって、メンバーは「2,3年かけて1枚のアルバムを作るのだったら、今までとは違うものを作りたい」と思いながら臨んだという。
その宣言通り、サウンド面では大きな変化が生じている。優美なシンセが物語へと誘うChanging The Rainでアルバムはスタートするが、前作にあったようなたたみ掛けるようなヴォーカリゼーション、ダークかつアグレッシヴなロックナンバーは減退し、変わりに耽美的な雰囲気に包まれたシンセサウンドが多く導入されている。
前作で、暗闇の中で見つけた「原色」を、青空のキャンパスに向かってぶちまけたようなサウンドスケープ、とでも言えばいいのか、1曲1曲のスケール感はさらなる広がりを見せている。
最近は、何かというとエレクトロを導入することで打破をはかるケースが多くて、個人的には食傷気味なのだが、彼らの場合はエレクトロに寄ったというよりは、目指す方向性上ごく自然にそうなったというような感がある。
ただ、今の時流的サウンドに踏み入れると、没個性の危険性もはらんでくるのだが、そこは見事にクリアしている。You Saidの現世とあの世をたゆたうようなメロディーラインにはうっとりさせられるし、前作を踏襲したようなI Can See Through You、Endless Blueのようなナンバーで見られる妖艶さとロックのダイナミズムの融合はバンドの個性の強度を感じさせるものとなっている。
個人的におもしろいと思ったのはMonica Gems。ガレージなギターリフからねっとりとホラーズ・ワールドへと導いていく展開力は今後磨いて欲しいところ。Still Lifeのようなニューロマ色の強いものはバンドには合わないような気がするが、さらなる成長点を求めてのトライなのだろうと思う。そういう意味ではこの「未完成」さは今後への期待が持てるという意味でうれしい。
★★★★(15/10/11)