2009年にデビューし、ファースト・アルバムがインディー・ロック界を飛び越え、熱い支持を集めたThe Pains Of Being Pure At Heart、待望のセカンドアルバム。瑞々しいメロディーとラフなギターサウンドの組み合わせは取り立てて珍しいものではないが、彼らの音楽にはほかのバンドにはない、性急な表現欲求にあふれていた。今ここで音楽を鳴らす必然性を彼らは持っている。だからこそ、拙く見える演奏でも僕らの心をふるわせたのだと思う。
2年ぶりの新作は、プロデューサーにフラッド、ミックスをアラン・モウルダーが務めるという、気合いの入れよう。明らかに前作とは違ったアプローチで制作されたことが伺える。そしてその成果はオープニングで早くも現れる。
メランコリックなイントロから、劈くようなディストーション・ギターへとなだれ込むBelong。思わず「スマパンじゃん!」と思ってしまったが、実はフラッドとアラン・モウルダーの組み合わせはスマパンの「メロンコリー~」と同じなのだ。「メロンコリー~」よりは「サイアミーズ・ドリーム」を彷彿とさせる、轟音ギターと美メロの競演であるが、バンドには似つかわしくないくらいどっしりと力強いナンバーである。
また、前作ではほとんど見られなかったシンセサウンドの導入もあちこちで見られる。そのせいか今作に納められた曲は色彩感が豊かな印象を受ける。彼らがこだわりを見せるノイズサウンドも過剰さを抑え、世界観を丁寧に描く要素として上手く使っているように見える。
残念ながら前作でも感じられた、アルバムの流れがやや平坦な印象はここでも変わらないが、曲そのものの輪郭はくっきりと描かれており、完成度は間違いなく上がっている。Anne With An Eでの息を呑むような美しさ、My Terrible Friendのあっけらかんとしたポップ性、ラストであるStrangeのスケール感の大きいシンセサウンドなど、やりたいことを明確にした上で忠実に鳴らしていると思う。そして、どれだけカラフルになっても、心をかきむしられるような痛みをもたらしてくれる。それは決して嫌なものではなく、生を実感する上で必要だと思われる類のものだ。
あと、やはりふれておきたいのが歌詞のことだ。これが実に良い。というか、単純に自分の好みだということなんですが。Heavens Gonna Happen Nowの歌詞は生涯抱きしめたくなるくらい、僕に切実に響くものだ。
「今すぐ文章にして書きなよ 君の本当の友達は言葉だけだから
これまでにないくらい 固く信じているんだね。
君の抱えているものが癒されることは決してないと」
「実家のように見える監房の中
君が知っているのは一人遊びだけ
ほかに行ける場所などどこにもないんだ」
「泣き崩れてみなよ、でなきゃ皮膚に傷をつけるだけでもいい
何から何まで書き留めているんだね
言葉は今も君を決して裏切らない忠実な友だから」
Heavens Gonna Happen Now
★★★★(18/07/11)