Collapse Into Now/R.E.M. | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up
 R.E.M.通算15作目となる新作。ロックンロールの殿堂入りを果たし、今や「かつてロック界の歴史を鮮やかに彩ったバンド」的な扱いも見て取れるが、自分にとっては「最高のロックバンドは?」と問われると必ず頭に浮かぶバンドであり、中学生の頃からアラフォーにさしかかった今まで、自分のロック観に多大なる影響を及ぼした存在である。


 1996年に発表された傑作「New Adventures In Hi-Fi 」以降の3作は、どことなくサウンドをまとめ切れていない、初期にあった鋭いエッジが感じられないことが物足りなく映っていたが、前作「Accessalate」で初期のような勢いのあるロックンロールを奪還。今作でもその勢いは止まることなく流れている。


 プロデューサーは前作に引き続きジャックナイフ・リー。パティ・スミス、エディ・ヴェダー、ピーチズら多彩なゲストを迎えて制作された新作。オープニングを飾るDiscovererは、イントロのギターが進軍ラッパのように力強く鳴り響く、開放的なナンバー。All The Best,Mine Smell Like Honey、Alligator_Aviator_Autopilot_Antimatterといった前作の流れをくんだややハードにドライブするロックチューンは健在。乾いたアコギの音と切なげなマイケルの歌声が絶妙なマッチングを見せるÜBerlin、マンドリンをフィーチャーしたOh My Heart、It Happened Todayといった曲もある。勢いだけで押すのではなく、「Out Of Time」「Automatic For The People」期で見られた叙情的なエッセンスも加えた、集大成的な印象もある。


 聴き所を抽出するのは難しい。Discovererに始まり、Blueで終わるというアルバムの曲順も変えようがないくらいはまっている。BlueのエンディングがDiscovererのイントロにつながっていくことで、未来への明るい予見を感じさせる、彼らが描いた「希望」のアルバムだ。そして、聴けば聴くほどマイケルの歌声とメロディーが染みこんでいく。使えば使うほどいい革艶になっていくような、ヴィンテージなテイストを持ったアルバム。


 歌詞は相変わらずどこかよじれた世界観を描いている。しかしポジティヴなヴァイヴ、じんわりと伝わってくるような暖かさもある。応援歌というわけではなく、本当に追いつめられた人たち、これ以上ないくらい絶望している人たちに共鳴する言葉と音がここにはある。そして、このロックが届くべき場所は世界の至る所にあると思うのだ。


 これは喩え話ではなく


 本当に悲惨な


 悲惨なこと



 もちろん僕は詩を書くよ


 今日をすべて終えたら


 翼を授かったから



 それは今日起きたんだ フレーフレー


 起きたんだ フレーフレー


            - It Happened Today -


(09/04/11)