Tahiti80の5thアルバム。なんだかもうアルバム10枚近く出しているような印象があったが、思えばデビューしてからまだ10年ちょっとなわけで。デビュー当時は、フランス生まれのスイートなギター・ポップバンドという感じが、今やすっかり落ち着いたカラーを纏った実力派といったところ。しなしながら、アルバムごとに大きくカラーを変えてくるバンドでもある。
オープニングを飾るDefenderがめちゃめちゃかっこいい。イントロの電子音だけ聞けば、「あぁ流行のエレポップ風かな」と思うのだが、そこに彼らにしてはラウドなギターとヘヴィーな四つ打ちドラミングをかぶせることでロック的な要素を高めている。しかもそれが無機質なデジロックにはなっていない。メロディーも不規則な展開を見せているのに、不思議といつものタヒチサウンドに感じるポップな清涼感が溢れた曲に仕上がっている。それでいて、スケール感が大きく広がったことも見事に提示されていて、タヒチが新章へと突入したことを告げる、このアルバムのベストトラックとも言える。
で、このDefenderに象徴されるように、前作「Activity Center」がシンプルで開放的なギターロック作品だったことと比べると、今作ではエレクトリックな要素がかなり強くなっている。しかしそれは、単純にサウンドをエレクトロなものにしようと言うことではなく、自分たちの音作りに「自由」を求めたことによる結果だと思う。
それ故に、このアルバムには彼らの描く「カオス」がある。ポップミュージックに対する貪欲なまでのクリエイテヴィティがこのアルバムの原動力となっている。中にはそれが暴走してしまっているような曲もあったりするが、この[まとまりのなさ]が僕にはとても新鮮に映る。彼らの中にもこんなに大きな音楽の「モンスター」がいたんだとうれしくなった。聞く人のタヒチのイメージが大きく変わるくらい、遠慮のない挑戦的な姿勢が感じられると思う。
ダークなディスコサウンドSolitary Bizness、大胆なホーンセクションと打ち込みの絡みが魅力的なThe Past, The Present & The Possible、テクノなインストRain Steam & Speedなど、これまでの作品の中で一番幅広いサウンドに取り組んだアルバムだといえるだろう。
もちろん、彼ら独特の心の琴線に触れるメロディーラインは健在。Want Some?の郷愁的なメランコリックさは、めちゃめちゃツボだし、Darlin' (Adam & Eve Song)で見せるグザヴィエのスイートソウルなヴォーカルもたまらない。
日本盤にはボーナストラックが4曲収録されているが、こちらも秀逸。特にセックス・ピストルズのカバー、Holidays In The Sunが最高。UKパンクを代表する曲が、見事なギタポに生まれ変わっている。
★★★★☆(01/04/11)