キャンプ・パンゲア/Soul Flower Union | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up  ソウルフラワー約2年ぶりの新作、キャンプ・パンゲア。毎度のことながら全15曲の大作。ここのところ2,3年のペースでシングルをリリースしながらアルバムを制作するというスタイルを確立している。それ故に完成したアルバムには常に「集大成」的な雰囲気が感じられる。当然今作も、彼らにとってはぶっちぎりの最高傑作、ということになる。


 ロック、ソウル、沖縄音楽、レゲエ・・・雑多な音楽性を飲み込み、市井レベルで嫌みなく鳴らすことのできるバンドとしてシーンに君臨する彼ら。一頃の政治スタンスの色の濃さが今ではだいぶ薄れ、メッセージ性とポップミュージックの高揚感のバランスが年々良くなっているように見える。


 さて、新作であるが必ず冒頭で放たれるつかみの一曲目はインストを挟んだあとの「ホップ・ステップ・肉離れ」。アイリッシュトラッド風の軽快なサウンドをバックに中川が「終わりの季節だ、始めよう!」とアジテートする。続く「ダンスは機会均等」ではエレクトリック音頭ともいえるようなインパクトの強いレベル・ミュージック。間違いなくこのアルバムのリードトラックだと思う。


 ロックなテイストはやや後退した代わりに、ポップ面での深化が目立つ。シングルにもなった「死ぬまで生きろ!」のトロピカル・ミュージック、ギラギラとしたラテン「太陽がいっぱい」「千の名前を持つ女」、ビッグ・バンドのジャズサウンド「ルーシーの子どもたち」など、「わかりやすい」という視点ではなく「普遍性」を追求するという音楽の求道者的な姿勢が色濃く表れている。売り物にするのではなく、人々の心に届き、血となり肉となる音楽を。彼らのポップ性はそこから来ている。


 そして歌詞の世界観の変化も見て取れる。戦火に悲しむ人々に溢れた現実社会の不条理さを訴え、打破していこうという一本槍なところから、もっと多角的に人生を捉える内容が多くなった。打破しようという気持ちは持ちつつも、その中でいかに明るく生き抜くかというところに強く焦点を合わせてきた。こういう方が自分にとってはしっくり来るし、共感できる。深く考えさせられる。

 個人的にはニューエストを思わせる「パンゲア」や中川の男気と見え隠れするメランコリアが絶妙な「スモッグの底」が好き。もう少しこういうロックテイストのある曲が多い方が好みなのだが、アルバムを聴き終わった頃に残るのは、唯一無二のグルーヴ・バンドとしての暴力的なまでのパワー。結成されて20年近く経つバンドの未だ終わりの見えない臨界点。いや、まだまだ見えなくたっていい。まだまだダンスし足りないんだから。


 ★★★★(29/01/11)