今や売れっ子ギタリストとして引っ張りだこのバーリー・カドガン率いるLittle Barrieの3rd。プライマル・スクリーム、ポール・ウェラー、スピリチュアライズド、果てはモリッシーまで数々のロック・ミュージシャンからその腕を買われているバーリーであるが、彼の魅力はまさにジャンルを問わない「ロックンロールの匂い」を強烈に感じさせるものだからだと思う。天性のものなのかもしれないが、粗暴でセクシャルなギタープレイというのはどんな嗜好の人にもストレートに届くのだろう。
その一方で、自らのバンドLittle Barrieの方も一切手抜きのない素晴らしい作品を届けてくれた。プロデューサーは、あのエドウィン・コリンズ。彼の復活作に参加した縁なのだろうか。そして新ドラマーはヴァージル・ハウというスティーヴ・ハウ(僕のイメージではイエスの人)の息子。父親ばりのマルチプレイヤーのようで、メロトロンやオルガン、シンセなどもこのアルバムでプレイしている。
肝心のアルバムの音であるが、当たり前のように全編に渡ってバーリーのギターテクが炸裂している。3ピースバンドであるが、「三者の鬩ぎ合い」的な音ではなく、あくまで中心はバーリーのギターで、他の二人はそれを支えるように手堅いプレイを心がけている。二人とも上手いのにあえて主張しない音作りをしているが、僕はこれで良いと思う。
いきなりサーフ・ロックな1曲目Surf Hellに「新展開か」と思わされたが、そんなことはなく2曲目How Comeでガツンと黒いUK王道ロックンロールをお見舞いされる。その後も見事にギターのダイナミズム全開なロックンロールが散りばめられている。
王道のガレージからサイケ風へと展開していくDoes The Halo Rust?、ツェッペリンばりの骨太ギターリフが冴えるNow We're Nowhere、I Can't Wait、ゴキゲンなダンサブルチューンTwisted Little Blades、ジミヘンか?と見まごうばかりの黒いグルーヴを描くTip It Overなど、基本は60~70'sのブルース心のあるロックンロールであるが、バーリーはどの曲でもエッジを立て、実によく弾きまくっている。テクニックがあるのだから当然ではあるが、自分のギターに対する自信に漲っている。そのぶれの無さがこのアルバムをより光り輝かせていると思う。
そしてギターだけではなく、ヴォーカルもこれまたかっこいいときている。まさにロックンロールをやるための才能が揃った男だ。ギターを少々たしなむ身としては、「どうやったら弾けるの?」っていう好奇心を持ってしまうアルバムであるが、単純に素晴らしいガレージ・ロックンロール・アルバムと思って楽しむのが良いと思う。
★★★★☆(19/12/10)