KIMONOS結成の経緯などについてはHPに詳しいことが書いてある。こちらを読むと、かなりKIMONOSの意図するものが見えてくると思う。かなり貴重なテキストなので、お時間のある方はぜひ。
個人的にはZAZENファンであるものの、LEO今井に関してはPVを数曲見たことがある程度。英語の歌詞なだけでなく、サウンドにある空気感も明らかに海の向こうといった感じで、全体的にシャープなロックと言う印象がある。その二人がどんなケミストリーをもたらすのか、大いにこの1stを楽しみにしていた。
1曲目、印象的な高速リフから始まるポリリズムなビートサウンド、No Modern Animal。2曲目Haiyaは向井らしいアーバン・マツリ・ビートな1曲だが、向井がここまでメロディーを歌っていることがすごく新鮮。これ以外でも向井がヴォーカルを取る曲はあるが、ここまで意図的にメロディーを向井が歌っているのは初めてではないだろうか。3曲目Soundtrack To Murderはスタイリッシュなニュー・ウェーヴサウンド。ギターの音色の匂い立つ感じが素晴らしい。この辺の艶っぽさもまた新鮮である。
アルバムを聴いて、自分の中で浮かんできたのがトーキング・ヘッズだった。サウンドが似ていると言うよりは、雑多な要素を無国籍風に仕上げていくというスタイルが似ているような感じがしたのだ。基本はシンセサウンド。とはいっても昨今流行のゴージャスな感じではなくて、近年のZAZEN BOYSでも多用されている適度なアナログテイストを持った感じ。そこにアフリカン・ミュージックやガムランなどをかませつつ、最終的にはしっかりKIMONOSのサウンドとなっている。
個人的に好きなのはMogura。低く唸るベースラインに、ピアニカのリフ、繰り返される「Mogura」のフレーズの心地よさ。意味は成していなくても、発語の快感、発音の快感みたいなものが凝縮されているような曲だ。あと9曲目のThe Girl In The Kimono Dress。ここではアコギをひきながら儚げな情景を感傷的なメロディーで歌っている向井がいる。曲がどうこうというよりも、こういうものを向井がやっている、という感動に近いものを感じてしまうのだ。
と、ついつい向井サイドからばかり語ってしまったが、このアルバムにおけるサウンド・フォーマットの割合は明らかにLEO今井の方が高いと思う。この両者の、もっと変態的なケミストリーを期待したのだが、残年ながらそこまで強烈なものは感じられなかった。どちらかいうと、LEO今井のアルバムを向井がプロデュースしたような感もある。しかしながら、LEO今井の洗礼を受けた向井の今後は絶対に面白いという確信がある。お楽しみはこれから、ということかもしれない。
★★★★(27/11/10)