ガールズ、全新曲のミニアルバム。今作に収録された曲は1st「Album」制作時に書かれたとのこと。Albumは未だによく聴く1枚で、こんなにヒリヒリしていて痛々しいのになぜか聴きたくなる。Hellhole Ratraceで僕は未だに泣ける。
でも、以前にも言ったかもしれないが、ここにあるのはクリストファー・オウエンスの人生そのもので、これは現実逃避でも架空の夢世界でもなく、リアルそのものなのだ。その圧倒的なリアル感を吐き出すためにはこれだけ純化されたメロディーが必要なのだ。これだけ、強固な絶対必要感を醸し出すロックはそうはない。歌えなくなったらクリストファーは死んでしまう。本気でそう思ってしまう。
今作は設備の整ったスタジオ録音をいうことで、音は格段に良くなっている。そもそも、音の善し悪しがこのバンドにとって大事な事かどうかは別として。でも、そのせいだろうか音色も1stに比べると増加し、サウンドプロダクションも洗練された感がある。
オープニングを飾るThe Oh So Protective Oneはいきなり南国チックなイントロで始まる。脱力系のサーフ・ポップ的な楽曲は1stにもあったが、こっちのほうがもっと彼方へ行っちゃってる感じがする。ホーンなども加わってサウンドの色彩も増している印象だ。Heartbrakerは爽やかなギターロック。すごくドラムの音がしっかり聞こえる分、タイトにエッジ感さえ感じるような1曲だ。こちらは無料ダウンロードで、一足早く公開された楽曲であるが、手元に歌詞カードが在るのと無いのでは全然違って聞こえる。嫉妬深くて、いつか自分の元から離れることを知っている男。ここにはその男の独り言しかない。それを高揚感と切なさを孕んだメロディーに乗せてぶつけるという構図に僕はとても弱い。
Broken Dreams Clubはあまりのレイドバックぶりに度肝を抜かれるが、溢れんばかりの「壊れた夢」が詰まった、ハイライトの1曲。個人的には一番好きな曲であるが、彼らの歌の中でもかなり絶望感の強い1曲でもある。その重さを振り払うように次曲Alrightは軽快なテンポでドライブするロックンロール。Substance、この曲はクリフトファーから放たれる「ギターソロ、カモン!」の言葉に尽きると思う。決して気分が高揚する中で発せられた言葉ではない。むしろ何かを哀願するように、助けてくれないかと言わんばかりに発せられたように聞こえる、その声のヴァイヴが心に突き刺さってくるのだ。そして、7分近いCarolinaは音の厚み、ダイレクトに感じられるノイズは新鮮さを感じさせるが、彼ららしい音が適度に粗いシューゲイズ・ロック。これは1stに収録されていても何ら違和感はないと思う。が、他の5曲は明らかに新章を感じさせるサウンドに仕上がっている。
正直聴き始めた頃は、一瞬で胸を鷲づかみするような磁力が感じられなかったが、聴けば聴くほど馴染んでくる、やっぱり素晴らしいアルバムである。しかし何でしょう、この純度の高さ。そして、どうしようもなく突き刺さってくる言葉。でも、日本語でこんな内容の歌あったら、絶対に引いちゃうような気もするのですが。
★★★★(13/11/10)
君を愛してると言いながら、ハニー、僕には始めから分かってたんだ
君を愛してると言いながら、ハニー、いつか悲しみの底に突き落とされると
貧しい人々はまだまだ大勢いる
この闘いが僕にはどうにも理解できないんだ
無意味なあらゆることに 絶望的になりながら
生まれては死んでいく、あまりに大勢の人々
「なぜ?」という問いさえ投げかけることもないままに
消し飛んでいったあらゆる夢
どうすればこれ以上がんばれると?