A-Z Vol.2/Ash | Surf’s-Up

Surf’s-Up

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Surf’s-Up Ash,A-Zシリーズの完結編。A-Zまでのタイトルのシングルをリリースし続けるという一見無謀なアイディアを、結局彼らはやりきった。そのことだけでも賞賛に値すると思うが、やはり気になるのはそのクオリティー。Vol.1はAshらしいイノセントなメロディーへの愛が感じられるアルバムとなっていて、結果として彼らの魅力を伝えるのには最高のパッケージングとなった。つまりはAshにとって、困難を伴う作業であっても、無理なことではないのだ。


 アルバムとしての形、全体像ありきなのではなく、楽曲至上主義を実演してみせるには、ハイクオリティーのシングルをリリースし続けるのは格好のアイディアであった。また、それに取り組むことによってバンドのポテンシャルが最大限に引き出せた。そういう意味では、今バンドはキャリア史上最も充実した状態なのではないだろうか。


 Vol.1もボートラを抜いても18曲というかなりのボリュームであったが、Vol.2も16曲とこれまた盛りだくさん。全体的な印象としては、さ相変わらずキャッチーな良い曲揃いなのはもちろんのこと、ギターロックとしてのソリッドさが増した曲が多くなっている。勢いがあるというか、良い意味で粗暴的な牽引力を感じる。まぁ、ドライブ感と表現すれば良いところかな。


 また、メイン・ソングライターであるティム以外のメンバーの曲のクオリティーも全く引けを取らない。アルバム中でもおそらくベストトラックの一つに挙げられるだろう珠玉のバラード、Change Your Nameはリックの作品である。このようにティム以外のメンバーのソングライティング力が伸びてくることによって、また新たな扉を開けられるかもしれない。と、そんな感じで「やりきった」という達成感よりは、「これから」を感じさせる要素の多いアルバムである。


 ただ、さすがに良い曲ばかりでも、若干食傷気味になることは否めない。僕のようにどこまでもギターロックが好きな人間でもさすがに終盤はちょっと飽きた。次回ニューアルバムを作るときは、その辺のバランスも考えてくれると嬉しい。



 ★★★★(1/11/10)