先日、レディングフェスで劇的な復活を遂げたThe Libertines。しかしなぜかこのタイミングでカール・バラーのソロアルバムがリリースされた。リバ解散後、ベビシャンとDPTへと袂を分かったピートとカールであるが、僕はなぜかベビシャンはダメで、DPTの方がずっと好きだった。特にDPTの1stは大好きで、あのタイトなロックンロールの小気味よさは、実はリバには無かった要素だったなぁ、もっとリバ時代に出せば良かったのになんて思いながらもよく聴いた。
2ndは多様性を追求して見事にこけてしまい、DPTは解散。それから約2年経ってソロアルバムという形で作品を発表したわけだが、これまた実に驚くべき内容になっている。
エキゾチックなイントロで始まるThe Magus。ちょっと酔いどれたような歌唱は、「なんかピートっぽくない?」と思ってしまったが、哀愁漂うメロディーラインはまさにカールの十八番。これはあいさつ代わりのようなもので、実にバラエティーに富んだ楽曲が収められている。DPTの2ndでは単なる挑戦に終わっていたが、今作ではそのアイディアたちが熟成されて旨味が出てきている感がある。このアルバムは多彩なゲストを迎えて制作されているが、彼らの貢献度の高さが分かる音になっている。
ホーンセクションがフィーチャーされた軽快なRun With The Boys。The FallはDivine Comedyのニール・ハノンとの共作。男女の破滅的な行く末を戯曲的な構成で表現している。The Poguesを思わせるような無骨ながら切ないスローナンバーSo Long, My Loverはこれからソロでキャリアを築いていくなら、間違いなく代表曲になるだろう。こんな風に当然リバでは出来ないようなサウンドが展開されている。
もちろんJe Regrette, Je Regrette、She's Somethingのように、リバファンなら「待ってました」と言うようなギターロックもある。個人的にもこの2曲が格段に好きだったりするが。一言で言ってしまったら、カールのバックボーンを余さず音にしてしまったようなアルバムだと思う。ストリングスやコーラスが多用されているのも、彼の元々の嗜好の影響だろう。逆にインディ臭のないゴージャスなサウンドに、カールの新たな気概さえ感じる。
ただ、良い曲揃いであることは認めるが、やはり自分の心を突き動かす力はやや足りない。好みの問題でもあるが、ロックしているけど転がっていない感じがする。もっとやんちゃでいいんだけどな。
★★★☆(31/10/10)