マッドチェスターの数少ないサバイバー、The Charlatansの通算11作目。「もうそんなになるのかぁ」というのが正直な感想。しかし思えば、当時イギリスを席巻していた二つのバンド、The Stone Roses,Inspiral Carpetsをもじって「インスパイラル・ローゼズ」と揶揄されながらも、全英1位に輝いた1st、Some Friendlyから20年、生涯の心の名盤、Telling Storiesからでさえ13年経つのだ。
でも20年の活動期間でアルバム11枚というのはなかなかすごい。単純に2年に1枚くらいのペースということになるが、順風満帆とは言えない時期もあったわけで(ロブの逮捕や死など)、そういう状況の中でコンスタントにリリースするこのバンドの生命力は半端ではない。今作からもその半端なさはビシビシと伝わってくる。プロデューサーはキリング・ジョークのユース。この人選からもシャーラタンズがまだまだ守りに入っていないことが分かる。
オープニングを飾るのはシングル曲Love Is Ending。まずこの曲のかつてないほどに高速で重厚なイントロに驚かされる。このラウドかつ無機質な感じはまさにユースの仕事かと思うのだが、曲自体はシャーラタンズらしいグルーヴィーなロック。かっこいい。2曲目はこれまたシングルのMy Foolish Pride。こちらもまたシャーラタンズらしいポジティヴさにあふれたメロディーラインとダンサブルなビートが上手く溶け合った曲。3曲目Your Pure Soulはティムのメランコリアが爆発したような曲。男の悲しさ、やるせなさみたいなものをティムが歌うと、本当に美しく聞こえる。
といった感じでアルバムはバラエティー豊かな内容となっている。前作You Cross My Pathが攻撃的でノリの良さを目指した内容だったことと比べると、今作は自分たちの作りたいサウンドをやれるだけやろうという意図があったのではないかと思う。オルガンが疾走するSincerity,高揚感溢れるTrust In Desire,十八番の風のようなロックチューンWhen I Wonderなど、「これぞシャーラタンズ」というようなナンバーもあるが、ラウドに、緩やかに自在のグルーヴィー・サウンドを描きながら、そこに自分たちのやりたいことをガンガン盛り込んでいく。それゆえに時には「やっちまったか?」と思わせられることも少なくない。正直今作にもそういう面が見られることがある(個人的にはIntimacyのメロディーラインとか)。
しかし少々強引な面もあるが、これだけ年季があるバンドがそれだけのパワーを見せることは、とても喜ばしいことだ。個人的には新作のニュースを聞くたびに格別のワクワク感を感じる、大好きなバンド。このワクワクはもうしばらくは続きそうだ。ただ、ドラムのジョン・ブルックスが脳腫瘍で療養中とのことで心配。これまでのようにこの困難を乗り越えて欲しい。
★★★★(11/10/10)
なぜかかっこいいイントロがばっさり落とされているPV