Paul Wellerソロ通算10作目。すっかり一番長いキャリアがソロとなってしまった。つまりは、Paul Wellerの音楽を語るときはすでにソロ作品が中心となるわけで、このPaul Wellerのキャリアって芳醇さに満ちあふれているなと改めて感じる。もっとも、全てが順調だったわけではない。スタカン後期からソロを始めた頃まで、彼に対する「もう終わった」感は相当高かったと記憶している。それが今やモッドファーザーとして愛され、シーンのど真ん中を走っているわけだから面白いものだ。彼の場合、運と言うより実力で道を開いてきたわけで、このアルバムもまさにそういう「開拓者」としてのプライドと威厳を十分に感じる、素晴らしいロックアルバムとなっている。
「目覚めろ、国民」という刺激的なタイトルが象徴するように、歌詞はかなり政治的なメッセージを含んだものが多い。しかし、小難しい知識で攻めるのではなく、とにかく今、「言いなり」ね自分を変えろという明確なものだ。全く持って日本も同じだが、飼い慣らされるな、ということだ。
アンプに繋いで音を出したような始まりの、ノリの良いロックンロールMonnshineでアルバムはスタートする。続くWake Up The Nationが最高。これぞポール・ウェラーというモッズサウンド。タイトなロックンロールだ。「貫禄と余裕」という言葉がぴったりである。ライブで聴きたいシンガロング・ナンバーFind The Torch,Burn The Plansなんかもバリバリなんだけど、決して力が入りすぎてはいない。非常にメリハリが効いていて、16曲収録ながら聴き疲れがしない。
幾分R&R寄りには戻ったものの、前作で得たメロディックで実験的な要素はここで更なる成熟を見せている。3曲目No Tears To Cryはスケールの大きいメロディーとストリングスが絶妙なバランスを見せている。また、Aim Highではファンキーなサウンドに乗せて、ポールのハイトーン・ヴォーカルが聞ける。Andromedaで見せる柔らかでセンチメンタルなメロディーや、In Amsterdamのバロック・テイストも全く違和感なくアルバムにとけ込んでいる。
ちなみにこのアルバムではかつての盟友、ブルース・フォクストンが2曲参加しているまた、マイブラのケヴィン・シールズも2曲参加。特に7&3 Is The Strikers Nameでは彼にしてはやや控えめだが、世界観に則したフィードバック・ノイズを聴かせている。
ポール・ウェラー、御年51歳。しかし、単なる「怒れるオヤジ」ではない。音楽的アイディアに溢れ、未だにシーンを刺激する作品を生み出し続けている。唯我独尊を貫ける人はそうはいない。でも今作はポールならきっと、と思わせてくれるような素晴らしい作品だと思う。
おすすめ度★★★★☆(29/04/10)