こういうことがあるのか。当時レコーディングされたものがふとしたことで見つかる、という話しはたまに聞くが、これまでのものが長年の時を経て奇跡的に見つかるなんて。そもそも紛失するってどういう状況なんだ?と思うのだが。まぁ、見つかったことをまずは素直に喜ぼう。アルバムとしてしっかり完成している作品であるし、セルフカバー集のようにも聞こえる興味深い作品だ。
数えると21年前の音源ということになるんだけど、まず全く21年前という時の長さを感じない。高校生くらいの時に「I Like You」が、よく行くローソンでやけにかかっていたのを覚えていたり、筑紫哲也のNews23のエンディングで「ニュースが知りたい」が流れていたなぁとか、2・3sの「メルトダウン」が入ったアルバム(Music From Power House)好きだったなぁとか、いろいろ思い入れはあっても、このアルバムが当時の物とは思えないのだ。
つまり、21年前から清志郎は清志郎なんだなと。当たり前なんだけど、彼の生み出す音楽のタイムレスな空気ってやっぱりすごい。全体的にルーツミュージック/ブルース寄りのアレンジの曲が多いが、清志郎の歌声で魂が吹き込まれた瞬間に唯一無二のロックになってしまう。新しいとか古いとか関係なくなっちゃう。
個人的には「恩赦」が好き。ちょうど自分が高校1年の時に、昭和天皇が崩御となり、初めて「恩赦」という言葉を耳にした。当時は意味がよくわからなかったが、今でもはっきり言うと分かるようで分からない。そんな「得体の知れない」言葉を、見事なセンスで歌にしてしまった清志郎の凄みがこの1曲に凝縮されているような気がする。
おすすめ度★★★★(22/03/10)