CYHSYのフロントマン、アレック・オウンスワースの新バンドFlashy Pythonのファーストアルバム。CYHSYの方は現在全く予定がない状態。そんな中で、多作で知られているアレックは予定していたソロアルバムよりも早く、Flashy Pythonというバンド名義でのアルバムをリリースした。
肝心の音の方であるが、CYHSYの3rdと言われても全く違和感のない自由度の高いサウンド。強いて違うところをあげるとすれば、アメリカン・ロックのテイストがやや強くなっている様な気がする。ギターの音色やドラミングももややレイドバックしていて、それがあのアレックのヘナヘナヴォーカルと絶妙に溶け合っている。また、随所に使われるブルースハープやオルガンの音も楽曲に開放感をもたらしている。
2ndで見せた攻撃的でダークな面よりも、このアルバムでは1stにあった、あたたかだけどひねりまくっている独特のポップテイストが復活している。この辺は1st信奉者には嬉しいところだろう。でも、それだけでは終わらない。CYHSY作品は割と抽象的な表現が目立っていたが、今作では楽曲の味付けをより明確にしている。またThe Lady Is A Ghostの疾走感、チープなアコーディオンっぽい音をバックに歌われるObscene Queen Beeのソフトサイケなど、さらなる実験性が爆発しているようなところがある。
それでも、ソロやユニットとして趣味性の強い音楽を作っているというよりは、明らかに「バンドサウンド」というところに重きを置いている。ゆえに実験が単なる遊びに終わることなく、強度の高い楽曲として昇華している。どれくらいの期間で作られたかは不明だが、相当しっかりと作り込んだのではないかと思う。
個人的に好きなのはIchiban Blues。東京や京都という単語が出てくるところも新鮮であるが、ジョン・レノンのソロ作にあるようなR&B寄りのサウンドがシンプルで良い。また、In The Darknessの幸福なサイケ感は、たとえようもない高揚感を与えてくれる。
おすすめ度★★★★☆(09/03/10)