キツネからの新人Two Door Cinema Club。北アイルランド出身の3ピースバンドである。ダンスビートとポップなメロディー、そしてシンセの味付けと、それだけでだいたいどんな音を出すか想像できるだろう。
ただ、彼らの場合、基本線はあくまでギター・バンドだ。ポストパンク的カッティングやニューウェーヴ的エフェクトのギターが楽曲にエモーショナルに切り込んでゆく。その瞬間の空気感やグルーヴは紛れもなくロックだ。
ダンスビートから、時折疾走を見せるカッティングギターが眩しいCigarettes In The Theatreでアルバムは始まる。これだけ聴くと、すごくタイトでストレートな印象を受けるが、続くCome Back Homeの横揺れグルーヴの王道感、Something Good Can Workの80年代ポップ的幸福感、I Can Talkのつんのめり系直球ニューウェーヴなど、全体的には幅広いタイプの楽曲が並んでいる。
素晴らしいと思うのは、そのフットワークの軽さだ。良く聴けばそのように雑多な音楽性をバックボーンにしているのに、サウンドからは敷居の高さを全く感じさせない。むしろとても大衆的に聴かせてしまう力を持っている。その力の源になっているのはやはりメロディーの良さだろう。とてもしなやかで、伸びのあるメロディーがこのバンドの魅力をシンプルに伝えているように思う。
そして、どの楽曲を通しても伝わってくるのは、ある種の切なさ。どんなにポップに、享楽的に鳴ろうとも、後に残るのは「いつか終わってしまう」という達観的なものなのだ。Two Door Cinema Clubの音楽は、その終わりへといかに向き合っていくのか、彼らなりの一つの回答のようにも見える。
おすすめ度★★★★(05/03/10)