マンチェスター出身の3人組、Delphicのデビューアルバム。 テクノ系のレーベルR&Sが彼らの作品をリリースするために、10年ぶりにカムバックしたという話も有名になりつつあるが、実際シングル「Counterpoint」リリース後の彼らは勢いを増すばかり。そんなバンドの良い状態が良い形でパッケージングされたアルバムだと思う。
音楽性は、テクノサウンドにマンチェスターのバンドらしい、哀愁のあるメロディーが絡んでいくというもの。メロディーが前面に出ていく感じはKlaxonsっぽさを感じる。しかし、一辺倒ではなく、テクノサウンドが歩んできた歴史(ポップス・ロックとの融合)をなぞっているような構成は幅広いリスナーのツボを刺激するように思う。
エモーショナルに高みを目指していくメロディー、Clarion Callやギュンギュンにギターを弾きまくるダンスナンバーHalcyonなど、これまでのダンス/テクノバンドとは一線を画すような曲も多い。哀愁漂うシンセサウンドにしなやかさと憂いを込めたヴォーカルは「Duran Duranか?」と思わせるSubmissionという曲もある。
Acolyteが個人的ハイライト。大河を思わせるような重厚なイントロから快楽的なディスコサウンドへと展開していく、最も思い切った曲ではないかと思う。
自分たちがこれまで吸収してきたものをいとも簡単に高揚する音楽へと結実できる、今の若い人たちの「器用さ」というのは本当にすごい。これは、昔のアーティストには絶対になかった感覚だ。サンプリングが当たり前になり、過去のものを取り入れていくことにどんどん自由になってきた結果、自分たちのセンスを押さえ込むことなく開花させることができる。
ただ、そうであればもっと思い切ったことも出来るのではないかとも思う。「気持ちの良い」音楽の賞味期限も短く終わることが多い。キラーチューン満載の作品であるが、どのように聴かれていくか楽しみである。個人的にはあくの強さを今よりも出して、メロディー以外の所も爪痕を残すようなバンドになって欲しい。
おすすめ度★★★☆(25/01/10)
Counterpoint
Doubt
This Momentary