Contra/Vampire Weekend | Surf’s-Up

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 Vampire Weekend2年ぶりとなるセカンドアルバム。まさにどのアーティストにも「鬼門」となるセカンド。変化または進化を過剰なまでに求められてしまうことは、音楽界ではざらなこと。


 しかし、そんなことは全く眼中になかったんじゃないか、というくらいこのセカンドは大きな飛躍を果たしている。そんなことに全く縛られない強度と自由さを持ったアルバムが誕生したのではないだろうか。


 トライバルなビートを基調に、そこにアフロ、エレクトロなどポップな要素を盛り合わせていくという構造は、前作とさほど変わらない。しかし、前作よりも圧倒的に1曲1曲が輝きを放っている。率直に言うと、ファーストよりも瑞々しい。


 Horchataのイントロから降り注ぐようなコーラスに入るときにすでに持って行かれそうになる。前作にはあまり感じられなかった「美しさ」が新作では随所に見受けられる。流麗なピアノ、バロックオルガンに乗せて囁くように歌うTaxi Cabにもクラシカルな美しさがある。


 一方で、祝祭的な空気を持ったRun,Diplimat's Sunなどアフロ全開なポップはさらに冴えを見せている。個人的なハイライトはリードトラックのCousins。このリフはまさに新時代を象徴するようなインパクトがある。つんのめるようなポップ感は取り立てて珍しいものではないが、彼らがやると喜びに溢れたような響きに変わる。また、彼ら史上最も直球ポップなGiving Up The Gun、サイケ感を漂わせるラストのI Think Ur A Contraで彼らの新たな可能性も感じさせるところが心憎い。


 トータル的に見るとメロディーも素晴らしいのだが、アイディアの素晴らしさやさらに磨きをかけたポップセンスなど、それ以外のところで1曲1曲の印象が聴き手にくっきりと残る。自分たちのやりたいことを詰め込みすぎるのではなく、適したフォーマットの中で精選していくことで、より高揚感溢れるポップを表現することに成功したのだと思う。


 はじける、うねる、たゆたう・・・実に様々な側面を見せるアルバムであるが、決して特別なアルバムではない。敷居も高くなくて、すごく日常的な香りを感じる。実はありふれた自分たちの生活も、本当はVWの音楽のようにキラキラしているんじゃないかって思わせてくれる。なぜなのかわからないけど、そういう気分にさせてくれる素晴らしいアルバムだと思う。


 そして、このアルバムを聴くたびに僕はThe Strokesのことを考えてしまう。思えばストロークスもそういうバンドだったと思う。目線が聴き手といっしょでありながら、とてつもなくかっこいいロックを奏でるという。奇しくも共にNYのバンドである。


おすすめ度★★★★★(18/01/10)