試聴機の隅にあったCD。リンゴ・デススターという全くの初耳のバンド。テキサス州ボーモントにて結成。2008,09とSXSWに出演。「彼等のサウンドはジーザス&メリー・チェイン、マイ・ブラッディ・バレンタイン黄金時代を思い出させる」とメディアからも賞賛されたそうだ。
サウンド的にはそう、かなり正統派のシューゲイザー。個人的には今「ニューゲイザー」と呼ばれるものに対して、目新しさは感じてもカタルシスまで到達することがなかったので、こういうギターノイズの海、甘美なメロディーというシンプルな組み合わせは、基本に戻ったような安心感を覚える。聴く人によっては、「もろじゃん」ということになるわけだが。
アルバム内容も、まさにシューゲイザーのおいしいところをぎゅうぎゅうに詰めたような感じになっている。ジザメリ、マイブラだけではなく「これはRideじゃない?」「チャプターハウスだね」みたいな感じで、どんどん広がっていくくらいシューゲイザー隆盛の時代を思わせるサウンドが聴ける。
曲の尺も2、3分台が大半で、コンパクトな感じがかえって良さを引き立てている。暗がりの中からノイズの光を当てるようなSwirlyで幕を開け、ポップなメロディーと共に一気に疾走するStarrshaへと傾れ込んでいく展開や,壮大な世界へ広がりを見せていくSweet Girlから攻撃的なIn Loveへのつなぎ方とか、聴き手の「こう来てほしい」というツボを心得ているが、あまり作為的な感じがなくすんなりと聴ける。
何か突き抜けるような臨界点は正直見いだせなかったが、自分たちのやりたいことをナチュラルに構築できるところはセンスが良いんだと思う。シューゲイザーが好きな方にはいろいろな意味で楽しめるアルバムだと思う。
蛇足かもしれないが、Summertimeの「魅力的な輝き カリフォルニアの太陽 原子爆弾のように光り 彼女は僕のものだった」という歌詞は、日本人の僕にはどうにも嫌悪してしまう表現だ。悪意がないのは重々分かっているが、どうにも見逃すことができなかった。
おすすめ度★★★☆(20/11/09)