Ian Brownの通算6作目のアルバム。今年でThe Stone Rosesの1stリリースから20周年を迎えるわけだけど、不思議とそんなに年月が経った気がしない。そして逆に、イアンのアルバムもっと出ていると思っていた。
前作「The World Is Yours」ではストリングスを多用した壮大なバックトラックとイアン節の融合を見事に成功させ新境地を開いたが、今作はイアンの本流に近い、ブラック、ヒップホップなどリズムをすごく意識した作品となっている。
オープニングはパーカッシブなピアノがリードするStellify。イアン独特の歌メロが相性良く絡んでいてすごく良い。イアンの歌ってあまり抑揚がないようなところがあるのだけど、それが逆に緊張感を与えているように感じる。躍動するリズムに対して、イアンの歌だけはそれに左右されることなく、自分の見える道だけを真っ直ぐに進んでいる。そのコントラストのバランスが絶妙なのだ。
続くCrowning Of The PoorやJust Like Youといった曲は非常にフロア寄りな感じ。アルバムの後半もシンセとリズムトラックがリードしていく曲が多い。シンセの使い方などちょっとトランス系なところもあって、普段こういうテイストのものを全く聴かないんだけど、不思議とイアンの声が入ってくると普通にロックに聞こえる。
カバー曲のIn The Year 2525は西部劇のサウンドトラックのような仕上がりであるが、歌詞が強烈だ。未来を予見したような内容だけど、これよりも今世界が向かっている終末への速度は、明らかに速い。
5曲目のAlways Remember Meは一転してシューゲイザー的な重厚さを持った曲。そして、あのThe Stone Rosesのことを、ジョンへの想いが込められた歌となっている。ここに出てくる「君」は一人「森」の中へと入っていく。そして「僕」は、いつまでも自分を、そして「あの頃」のことを覚えていてほしいと願っている。当人達にしか分からないことではあるが、そこにあった感情の入交が想像させられ、何とも言えない気持ちになる。
ラストのSo Highはイアン流ゴスペル・ソング。タイトルの通り、より高みを目指しているという壮大な世界観を持った曲。未だにこうやって自分の理想への想いをこんなにストレートに表現できることが驚きである。それがまた嘘くさくない。きっとまじめな人なんだろうな。
個人的には前作よりも好きです。普段ダンス系やヒップホップを聴かない自分でも、すんなり聴けてしまう、むしろちょっとはまっている。
おすすめ度★★★★(20/10/09)