Muse待望のニューアルバム。今やUKロック最強の3ピースバンドと言える彼ら。毎度驚かされるのが、その完成度の高さ。比類なき完璧なサウンド。個人的には3rd「Absolution」から常に満点なバンドなので、今作で「そろそろ・・・」という予想は正直あった。
前作で一つの完成型に到達したように見えた彼らのロックサウンドであるが、しかし、今作ではさらなる充実を見せるとともに、新たな可能性までも提示している。
オープニングを飾る、リードトラックUprisingは、ライナーノーツにも書いてあったか、めちゃめちゃマリリン・マンソンな感じ。暗黒のブギーとでも言おうか。地を這うベースライン、異形の世界へ誘おうとするシンセサイザーがかっこいい。
2曲目は流麗なピアノがなんともヨーロピアンな美を感じさせるResistance。サビで一気に展開するドラマチックなメロディーはいつものミューズ。めくるめくカタルシスをもたらしてくれるはずだ。
3曲目Undisclosed Desiresから弦楽器が登場し、いつものミューズサウンドにアナログな緊張感を与えている。
今作ではクラシックの要素が多いと言われていたが、この曲を皮切りにピアノや弦楽器、管楽器などが随所に導入されている。もともと過剰なまでにドラマティックなメロディーが持ち味なので、この相性は実にいいと思うのだが、個人的には彼らのハードな面が少し失われはしないだろうかと心配であった。
確かに、ハードなギターサウンドは若干後退した感はあるが、それで「迫力不足」になったとか、そう言うことはない。圧倒的な世界観を持つバンドなので、どんな表現を取り入れてもアイディア負けすることはないだろう。このバンドの強さとしなやかさはまさに底なしのように見える。
4曲目United States Of Eurasiaはマシューの朗々とした歌声が、やがてクイーンばりの一大ロックオペラへと展開していく。クイーンが苦手な自分にはちょっと味付けの濃いナンバーなのだが、最後ショパンのノクターンへとつなげられていく意外性が見事にこの曲にはマッチしている。
5曲目Guiding Lightは重厚なドラムから始まるが、シンセの響きと共に雲間から光が差し込んでくるような壮大なスケールのナンバー。ギターヒーローのように鮮やかに弾きまくるマシューのギターも聴き所だ。僕はマシューのギターがすごく好きなのでもっともっと弾いてほしいと思うが。
6曲目Unnatural Selectionは「人為的淘汰」という仰々しい邦題がついているが、アップテンポにギターがガシガシとかき鳴らされる、ハイライト的ナンバー。ギターのメロディーラインがアップダウンを繰り返し、ライブではめちゃめちゃ映えそうなハードチューン。7曲目MK ULTRAはUnnatural Selectionの勢いを受け継ぎ、ミューズ・クラシックとも言うべき高揚するサビの必殺度が高い曲。個人的には冒頭からここまでの流れがすごく好きである。
8曲目I Belong to Youから、また斬新な流れを見せる。ジャジーなピアノから始まる、まるでミュージカルのような1曲。
何を言っていいのか分からない
でももう言うべき時
世界の半分を旅してまであなたに言いにきた
私はあなたのものだと
こんな内容の歌詞を情感たっぶりに歌うのである。途中から哀愁溢れるクラリネット(オーボエか?)も加わりながら。サン=サーンスの歌劇の一節が途中に挟まれたりと、このアルバムの中では一番異彩を放っている曲である。
そして、ラストを飾る3曲Exogenesisは壮大なオーケストレイションを中心とした組曲。これもまた濃密な世界を描いている。おそらくとんでもないものなのだろうが、何度聴いても良い意味で「?」な曲。素晴らしいんだけど、ロックバンドMuseがなぜこのような曲をアルバムに入れることができたのか、どうも自分の中では飲み込めていない。ここまで完成されていながら、なおかつ先鋭性も失われていないことが驚きである。
アルバムタイトルに「反抗」とあるように、ここには世の中のシステム的なもの、圧殺される個人、そういうものを根底から覆していこうとする巨大なパワーが源にある。そこを厳つく表現するのではなく、芸術に理解がなかった時代に権力になびくことなく自由に表現していたアーティスト達はまさに「反抗者」だっただろう。僕はMuseにも同じようなスタンスを感じるのである。本来はそんな風に作品を作れる人たちこそがアーティストなんだろうな。
おすすめ度★★★★☆(18/09/09)