Eastern Youth通算13作目にあたるニューアルバム。ここのところコンスタントにアルバムを出してくれているのはファンとしてはありがたい。
オープニングの「一切合切太陽みたいに輝く」が最高だ。世の中に存在する全ての事象が光り輝く。でも、それはあくまで自分自身のあり方によるのだ。妥協せず、力一杯に己の生を行けば、何があったって受け止めることができる。そんなことを吉野さんは力一杯に叫び、ギターをかき鳴らし、歌う。イースタンが一貫して表現していることであるが、喉から血が出そうな「太陽みたいに輝く」というリフレインが、聴き手に力を与えてくれる名曲だ。
あと、個人的に好きなのが「脱走兵の歌」。抑圧、服従なんぞされてたまるかと逃げまくる兵士。シンプルなギターサウンドの代わりに、トランペットがまさに進軍ラッパとなっている。壁がそびえ立っているが、乗り越え、進む道の先には自由がある、という歌である。この
と、書いてしまうと、このアルバムが希望だらけの「人生賛歌」のように思われてしまうかもしれないが、当然そうではない。ここには「そうでなくちゃいけない」という決意と共に、目一杯の不安も描かれている。
君はいつも僕に恐怖をもたらして
見えそうになっていたものを隠してしまうんだ
だから僕は君の意地悪な目配せを
ありったけの勇気を込めて無視することにした
ーいつだってそれは簡単な事じゃないー
でも、自分の中にあるかすかなものを信じ、振り切っていく。確かなものではなく、「かすかなもの」。変わる風景はゆっくりで、歩幅の分しか進めない。太陽は途方もないところにある。
じゃあ、やめるか?そこら辺の奴らと愛想笑いしながら暮らしてゆくのか?
そんなことを正面切って歌うことこそが、真のエモーショナルなのではないかと思う。そういう意味ではイースタンは最強のエモである。基本的にエモが苦手な自分さえ魅せられてしまうほどの力を持っている。
サウンド的には特に大きく変わった部分はない。「365歩のブルース」以降の作り込まないで音のダイレクトな迫力をそのままに伝えようとするプロダクションはこのアルバムで一つの完成型となったような気がする。「明日を撃て」「デクノボーひとり旅行く」での重厚で攻撃的なリフ、「影達は陽炎と踊る」のアンダーグラウンドなグルーヴ感など、シンプルな分研ぎ澄まされているというか、ストレートに心に響く。
この「手数のかけなさ」こそが今のイースタンサウンドの肝となっている。明らかに「旅路ニ季節ガ燃エ落チル」「感受性応答セヨ」あたりにあった、わかりやすいメロディーは見られなくなってきている。その頃のイースタンが好きな人には物足りなく感じるかもしれないが、個人的には今のモードが今の彼らの表現には合っていると思う。染みいるようなメロディーである種の叙情性を持たせるよりは、圧倒的な爆発力で聴き手を喚起するようなロックが彼らにとって今最もリアルな表現だと思うのだ。自分たちが「これだ」と思ったものを、ありのままに表現することはなかなか難しい。しかし、その「空気を読まない」ところこそが、彼らの核なのだ。そしてそれはこのアルバムでも激しく炎上している。
おすすめ度★★★★(05/09/09)
一切合切太陽みたいに輝く