Armistice/Mutemath | Surf’s-Up

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 先日のSummer Sonicに2年連続出演を果たしたMutemath。ライブパフォーマンスに定評がある彼らであるが、ファーストの方も隠れた名盤として日本でもプッシュされていた。本作「Armistice」はセカンドに当たる。


 強引にカテゴライズしようとすれば、ミクスチャーロック。ファンク、ソウル、ヘヴィロックなど雑多な要素を上手く配置して楽曲を構成していくバンドである。その点では今作も前作同様であるが、スケールが更に大きくなり、アレンジも洗練され、とにかく完成度の高さが目を引く。また、メロディーもスタジアムロック系の明瞭で親しみやすいものが並んでいる。


 1曲目、The Nerveからして強烈だ。野太いベースラインから始まり、一度聴いたらすぐに覚えてしまうサビ、そこに超絶ドラム、ギターがねちっこく絡む。音響系っぽいアプローチを見せるBackfire、大仰なイントロから、街中を疾走していくようなロックナンバーSpotlight、軽いドラムンベースとピアノに、coldplayのような流麗なメロディーが歌われるPins And Needlesなど、個性的な曲が並ぶ。アフロビートにファンキーなベース、ホーンセクションが加わる、タイトル曲Armisticeは80年代のTalking Headsの影響を感じるし、ラストのBurdenでのドラムソロは緊張感と終末へと向かう高揚感がたまらない。


 印象的なのがその圧倒的なグルーヴだ。単に演奏力があるから、だけではない。彼らの真のグルーヴを最大限に引き出しているのは、実に巧妙に緻密に練り上げられた楽曲だと思う。余分な物がそぎ落とされたメロディーの強靱さがグルーヴのしなやかさに繋がっている。このしなやかさはまさにバンドの個性そのもののように感じる。


 前作に比べると「聴かせる」要素が少し増えている。ClippingやNo Responseなどで見せる艶っぽいヴォーカルはこのバンドがさらに多様な表現をすることが可能なことを感じさせる。若干優等生過ぎるというか、もう少しエッジを効かせてもいいかなという面もあるが、スケール感のある壮大な曲から自己の内部を見つめるようなダークな曲まで、実に自然によどみなく、しかもかっこよく聴かせるアルバムである。
願わくば、今後もこれ以上まとまらないでエッジを効かせながら、ロックのダイナミズムを感じさせる作品を作って欲しい。

 おすすめ度★★★★(02/09/09)