ついに3日目、最終日。といっても、今までなら昨日で終わっていたわけであるが、1日長くなっても正直全然長くなった気はしない。というか、これが4日、5日になっても不思議と長いとは思わないだろう。こういうものは、どれだけ長くなっても、良くなっても「もっともっと」と思ってしまうんだな。贅沢な生き物です、人間って。
ただ、間違いなく今日が三日目だと感じさせるのは、体の疲れが尋常でないこと。朝、猛烈にふくらはぎがつって、目が覚めました。
というわけで、朝も例のごとくだらだらしてしまい、マリンでミュートマスを観ようかと思ったけど、少し間に合わず結局メッセ内のスクリーンで観ることに。相変わらずパフォーマンスの質が高い。
今日の1発目はソニックでThe Temper Trap。まだ日本盤のアルバムが出ていないからか、観客はあんまりいない。あまりにいないので申し訳ない気持ちになり、僕もかなり前の方で観た。メンバー自身がサウンドチェックをしている。まるでローディーのように手際よくチェックを済ませていく姿に、全くオーラはない。
しかし、ひとたびステージが始まると、これがもう圧巻だった。余計なものが全くない、無垢なサウンド。Temper Trapの素晴らしさは、単に美しいだけではなく純粋な敬虔さが見事にポップソングとして昇華されているからだ。そして、ライブでも全く遜色ないくらい演奏能力もしっかりしている。今回の若手バンドの中では一番だと思う。
続いてそのままソニックでGrizzly Bear。傑作Veckatimestで展開されたソフトサイケ路線でどれだけライブを押していくことができるか、というところに注目していたが、目の前で生の楽器で繰り広げられることによって、1曲1曲の輪郭がCDよりもより鮮明になり、聴き手が音に浸れるようになっていた。ディスクにあるような美しい音のレイヤーはもう一つであったが、手にした瞬間に壊れてしまいそうな儚さみたいなものは十分に表現されていた。次への移動もあって最後まで見れなかったのが残念。
次は野外に移動して、曽我部恵一を。本人とウッドベースの2人で何となくステージに登場。そして、「恋におちたらって曲をやります」と言って、歌い始めた。海風に心地よい歌声が流れる瞬間。なんだかすごく尊いものを見ているような気持ちになった。ソカバンでは聴けない、大好きな「浜辺」も聴けた。お客さんがいつものコアなファンばかりでないことを感じ取ったのか、コール&レスポンスもいつもより控えめであった。テレフォン・ラブなんかかなりあっさりしていたもんな。
最後まで見る予定だったが、「魔法」の途中で雨粒が感じられたので、即退散した。まさか曽我部さんの途中で自分がいなくなるなんて考えられない事態だが、1日目に痛い目に遭っているので、心の中で何度もわびながら会場を後にする。
恋におちたら
浜辺
FIRE ENGINE
テレフォン・ラブ
キラキラ!
瞬間と永遠
魔法
?
案の定メッセに入った途端、外は豪雨に見舞われた。ナイスジャッジであったなぁ。
ここからは、僕が今回最大の目玉としているソニック3連発。
まず、Teenage Fanclub。大好きな彼らであるが、ライブはサマソニ第一回以来。自分が観たのが10年前だから、当たり前であるが前回よりも大分年を取ったように見える。
1曲目はManmadeの曲、It's All In My Mind 。このアルバム、あまり聴いていないので思い出すのに時間がかかったが、じんわりとメロディーが広がっていく最近の彼ららしい曲だ。また、新曲が今回何曲か披露された。印象としては、キャッチーではないもののフックとなるメロディーの心地よさを過不足無く展開させた味わいのある曲達だと思った。
過去の曲は、Grandprix,Song From Northern Britain当たりを中心に構成。個人的にこの時期がどストライクなので、最高に楽しめた。心地よいギターサウンドにハーモニー。どこまでも流麗なメロディー。ギターロックの職人達は、どこまでも頑なに自分たちの屋号を守っていく。それだって、十分にロックだと思う。
.It's All In My Mind
Fall
Don't Look Back
I Don't Want Control Of You
Sometimes
About You
Baby Lee
Ain't That Enough
Your Love Is The Place Where I Come From
I Need Direction
Sparky's Dream
Everything Flows
The Concept
こうしてみると、やはり2nd「Thirteen」の曲は無いんですね。1曲くらい聴きたかったな。でも、ベテランらしい余裕のステージング。大変満足しました。
グラスゴーの良心から、NYアングラのカリスマ、Sonic Youthへ。キャリアの長い彼らであるが、最新作「The Eternal」で見せた瑞々しいロックンロールに的を絞ってライブをしてほしい。これは僕の切なる願いであった。
ステージに登場した彼ら。キム・ゴードンは銀色っぽいワンピース。サーストンはステージに出るなり、シャツのボタンをキムに留めてもらってる。なんだか、男女の仕草だなぁ。
ライブ自体は、the Eternalを中心に構成されていた。1曲目Sacred Trickster から前方の客は大暴れ。ペットボトルや、何かしらの液体が飛び交う様が後ろからひっきりなしに見て取ることができました。ソニック・ユースはもう立ち姿そのものがロックで、危うい雰囲気をぷんぷんにまき散らしながらロックしていきました。The Eternal自体が、わりとコンパクトなロックナンバーを中心にしているせいか、思ったよりもノイズが唸りを上げることもなく、タイトな演奏が続いていき、最後のDeath Valley ‘69 でやっとサーストンとリーの怒濤のノイズ合戦に突入。最後はサーストンがアンプによじ登りながら二人のギターを合体。そんなサーストンが素敵だったのか、キムが軽く飛びついてライブは終了。個人的には願い通りであったが、ソニック・ユースの蜷局を巻いた部分というのも少し見てみたかった。
Sacred Trickster
No Way
Calming The Snake
Stereo Sanctity
Hey Joni
Poison Arrow
Anti-Orgasm
Antenna
Leaky Lifeboat
What We Know
Massage The History
Death Valley ‘69
ステージの途中のサーストンのMC、「今夜、雨の中でセックスしろよ」。こういうことをさらりと言ってもなんでもないのは日本ならビークルの皆さんくらいでしょうか。サーストン、かっこよかった。
いよいよ、今年の僕的トリ、The Flaming Lips。彼らを見るのはこれで3回目。過去2度ともぶっ飛ばされ、泣かされた。ステージ準備から巨大クラッカーを客席に発射するなど、相変わらずウェインのファンサービスぶりは心憎い。
半円形のスクリーンに女性が映し出され、その一部が開き、メンバーが登場(女性が見たら、若干「キャー」ってなるのかと思うが、この辺は「Christmas On Mars」という彼らが制作した映画を見ていただければ納得していただけると思う)。ウェインは例によってあのビニールボールの中へイン。観客の上を転げ回る様は、無邪気な子どものよう。
1曲目はもうお約束となったrace for the prize。クラッカー、風船、脇にはいろんな生き物。とにかく最初からとばしまくる。ポジティブなメロディーとふわふわと僕らの頭上をたゆたう風船。飛び跳ねまくる観客。もう始まった瞬間に、この世ではなくなってる。どこかのテーマパークに足を踏み入れたのと同じような気持ちになる。
続いて新曲は、これまでよりはわりとゴツゴツしたようなテイストがある、新たな一面を見せたコズミック・ナンバーだ。新作はこういう骨のある感じが中心となるのかな?今年中には聴けそうな新作楽しみである。
ある人は言いました。「彼らのステージはディズニーランドみたいだ。ウェインが発する甲高い『アリガトウ』はミッキーマウスそっくりじゃないか」と。聴いている人たちの幸せそうな顔。どんな人たちにとっても平等なアミューズメント。そんなウェインの誠実さがすごく伝わってきたライブだった。最後のDo You Realizeの素晴らしさに、思わず涙してしまった。
Do You Realize?
That Happiness Makes You Cry
わかるかい?
あんまり幸せだと泣けてくる
この歌詞通りの幸せで泣けるライブでした。
ここで、僕のサマソニは終了しました。正直体力を全て使い果たしました。Lifeゲージ残り0。今年もいいライブにたくさん出会えました。