ニュージーランドのバンド、Cut Off Your Handsのデビューアルバム。2006年に結成された4人組で、昨年サマーソニックにも出演を果たしている。僕自身は当時は全く知らなかった。
このアルバム、プロデュースはバーナード・バトラー。Cajun Dance Party,Black Kidsなど、バーナードはギターサウンドのポップ性をうまく演出するのが得意である。そもそも、Suedeでさえグラマラスなサウンドの中に浮かび上がるのは、一聴しただけですぐに覚えてしまうようなフックの強いメロディーラインだったわけで、そういう意味ではギターロックという割と限定されたフォーマットの中で、印象の強いものを作り上げることを目指すとすれば、まさに適任である。
で、実際バンドのポップセンスと、アグレッシブなギターサウンドが良いバランスで融合されたアルバムとなっている。楽曲もバラエティーに富んでいて、ポストパンクから果ては「もろスミスじゃん!」というところまで、自分たちがやりたいと思ったものを片っ端から詰め込んだような、もっといえば初期衝動の赴くままに作られたような作品集であると言える。
オープニングを飾るHappy As Can Beはドラマチックに展開するメロディーに男臭いコーラスも加わるシンガロングナンバー。これだけ聴くと「ギター色の強いArcade Fire」かなと思うんだけど、次のExpectationsは攻撃的なカッティングとつんのめるようなヴォーカルと、彼らが大好きなBuzzcocksを思わせる1曲。そして先ほど「もろスミス」と評したのはTurn Coldという曲。This Charming Manですよ、これは。しかもこの曲だけ、プロデュースがなんとあのスティーブン・ストリートなのである。ここまでくると、かえって微笑ましい。どの曲も共通して言えることは歌メロとギターリフの2つに重点を置いているという点。魅力的で耳を引きつける強烈なフックとして機能している。
ただ、曲そのものの魅力は十分なんだけど、全体として残るものが少々薄いのが残念。バンドの「無垢な」面だけが全面に出過ぎてしまったというか、「アルバム」というよりは「プレイリスト」という印象がどうも強く残ってしまう。そういう聴き方をしたら、かなり楽しめるアルバムだと思う。
おすすめ度★★★★(25/07/09)