Cage The Elephant/Cage The Elephant | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up Cage The Elephantのデビューアルバム。Cage The Elephantはアメリカはケンタッキー州ボウリング・グリーン出身の5人組。バンド名からしていかにもラウド・ロックな感じがするが、「ガサツなアクモン」みたいな言い方もされていて、なかなかおもしろい。


 ジャンルレス、ボーダーレスという言葉が全く意味をなさないくらい、今のロックシーンはどこまでもミクスチャーだ。変な話、各ジャンルを融合させて、どれだけ新しい物を生み出すかがちょっとしたムーブメントを作り出すきっかけになるわけだけど、最近じゃどうやっても「○○風」「○○年代」という言葉で括れてしまうところがある。


 Cage The Elephantの音楽性もスタイルだけ言えば、いわゆるミクスチャーの範囲であろうし、取り立てて変わっているところはない。しかしながら、これが素晴らしく良いだけではなく、なぜか新鮮に聴こえるのだ。


 まず感じるのは、表現力の豊かさ。リスナーの心を鷲掴みにする必殺のリフが随所に配置され、1曲1曲作風が違っても耳に残りやすい。リードトラックであるIn One Earはどっしりとしたベースラインにドライヴギター、ラップするヴォーカルにファンキーなメロディーラインと、レッチリを思わせるようなナンバー。続くJames Brownは、イントロのギターと刻まれるピアノがかっこいいハード・ロッキンなナンバー。Ain't No Rest For The Wickedはブルージーなスライドギターとヴォーカルの絡みがBeckを彷彿とさせる。


 こう紹介するといかにもアメリカな感じがすると思うが、ラーガなLotusのメロディーラインなんかは明らかにUK風で、Kula Shakerっぽさがある。Judasではニューウェーヴ、ポストパンクを思わせるようなクリーンなカッティングを繰り出しながら、ガレージな歌を展開する。こちらの予想以上に音楽性の幅が広い。それでいて、不思議と散漫な感じがしないのがこのアルバムのツボだろう。


 また、時にぶっきらぼうに、時にねっとりとハードロックなヴォーカルの意外な業師ぶりも、このアルバムの聴き所である。ストーンズっぽいナンバーが、まさに「ストーンズ」そのもののように、本物に聞こえてしまうような妙な説得力を醸し出すヴォーカリゼーションなのだ。


 ミクスチャーな音を鳴らすバンドの中で、全てが「自分たちのもの」になっているバンドはなかなかいない。ロックのダイナミズム、危うさ、セクシャルなところ、そういったものを匂わせる雰囲気をサウンド・グルーヴから出せるなかなか頼もしい新人である。フジに行く人は、是非ライブの方も。


 おすすめ度★★★★(14/07/09)