
まずダイナソーサウンドというと、殺伐感漂わせる轟音ギターであるが、もちろんこのアルバムでもそのギターは健在である。80年代後半、名作を連発していた頃を思い起こさせるくらい弾きまくっている。ただ、これまで感じた「ささくれだったもの」が、今回はやや控えめのように感じられる。この「ざらつき感」が押さえられている代わりに、あふれ出しているのはやり場のない悲しさを象徴するようなブルース。単純な表現をすると「ギターが泣いている」。延々続くギターソロに、これまでだと陶酔感や甘美なものを感じていたのだが、今作では救いのなさやうちひしがれているような絶望感みたいなものが感じられるのだ。
そして、メロディーもギターに負けず劣らず「泣いている」ように聞こえる。いつも以上にそういう曲が多いせいか、アルバムのトーンもいつもよりは低めな感じである。一番好きなのはPlansという曲。哀愁あふれるヴォーカルとメロディー、やり場のない悲しみを叫ぶギター。「悲哀」という感情を突き詰めたギターサウンドの究極系ともいえる曲。今回のアルバムは従来のタイプの曲よりも、こういうミドルテンポで感情を絞り出すように歌う曲の方がいい。
なんとなくであるが、大人の余裕を感じさせるアルバムである。ただバカでかい音でギターをかき鳴らすのではなく、抑揚を上手くつけながら聴かせるところはしっかりと聴かせる。ちょっとスリルがないのが残念ではあるが、どこから切ってもダイナソーなアルバムであることは確か。
おすすめ度★★★★(30/06/09)