今やUKロックの代表格バンドと言えるKasabianの3rd。衝撃の1st、革新の2ndとジャイアント・ステップをシーンに刻みつけてきたバンドであるが、実在した精神病院の名前がつけられたこの3rdアルバム。当然ながら一筋縄でいくようなものであるわけがない。
オープニングunderdogは「これぞカサビアン」という挨拶代わりの1曲。聴いた瞬間に口ずさめてしまう即効性のあるメロディーとずっしりと響くギターリフ。リスナーの心を無理矢理鷲掴みにかかるようなナンバーだ。しかし、以前から比べるとそのグルーヴが余裕と貫禄を感じさせるようなものへとシフトしてきているように感じる。若さならではの勢いで押してきた部分が、より確信が強まってきたようなところがある。
その考えを更に感じさせたのが、4曲目のFast Fuse。グルーヴの面で革新性を追求していた彼らが、あえてロックンロールの王道のようなナンバーを繰り出してきたことは、自分たちがもう何をやっても大丈夫だという確信を持った証拠だと思う。
そしてそれを裏付けるかのように、様々な冒険的な試みが見られる。サイレンぽい音が一瞬カンフー映画のサントラのようにも聞こえる仰々しさを持ったなTake Aim。メランコリックなアコギで始まる酔いどれバラッド、Thick As Thieves。これまた、時代劇(日本のね)で流れていてもおかしくない、West Ryder Silver Bullet。ストリングスとコーラスの使い方がノスタルジアを誘う。そして、Ladies And Gentlemen,Roll The Diceはもうタイトルまんまのナンバー。「Don't Give Up~」時のプライマルを彷彿とさせる、哀愁あふれるR&Bなスロー・ナンバー。
まるで盟友Oasisの近年のアルバムを思わせるようなバラエティーの豊かさである。それでいて、アルバムとしてのトータル性がすごく強いのは不思議なところ。個人的には前作「Empire」がやや単調に感じられたので、この方向性には大賛成である。そして、これまでよりも映像的な音になったような気がする。情景描写を前提にしたのでは、と思わせるくらい1曲1曲から鮮やかに映像が浮かんでくるような感じを受ける。
このアルバムを聴いて、カサビアンも大人になったなぁというのが正直な感想。バンドの持っていた不穏な雰囲気がやや薄まってしまったような感もあるが、野性的でもありどこか理知的なところも匂わせる縦横無尽さはこれからのバンドの武器となり得ると思う。これ以上はまとまる必要はないぞ!
おすすめ度★★★★(16/06/09)