前述のGrizzly Bearに続いてまたNYはブルックリンのアクロン/ファミリーの新作。先日来日を果たし、なんと一部ではDeerhunterとジョイントもあった。何ともうらやましい。
オープニングのEveryone Is Guiltyからいきなり強烈なグルーヴを叩きつける。スライを彷彿とさせる粘着質なリズムと民族的なメロディーライン。目まぐるしい展開を見せるこの1曲だけで、このバンドの凄みは十分に伝わってくると思う。60,70'sのアメリカンロックの影響が強いという印象を受けるが、この頃のネオ・フォーク・ムーヴメントを形成しているバンド達が、そこに実験性を持たせているように、アクロン/ファミリーもエレクトロニカやウォール・オブ・ノイズなど幅広い音楽性を自由に行き来している。
こう言葉にすると、フリーキーなイメージが先行してしまうかもしれないが、最終的に聴き終わった後に耳に残るのはグッドメロディー。幅広い音楽性に耐えうるだけの力を持った素晴らしい楽曲が並んでいる。これまたこのアルバムの大きな魅力である。
そんな中で自分が一番好きなのはTheAlps&Their Orange Evergreenというカントリーに近いフォークソング。風のようなメロディー、ギターのアルペジオ、シンプルな歌、全てが完璧な1曲。
歌詞の内容はインディアンの詩を思わせるスピリチュアルなものが多い。彼らの死生観だけでなく、今のアメリカも感じられる深い歌詞である。そういう内容が反映されてくるのか、どの曲にも独特の緊張感が宿っている。重苦しいというのではなくて、祝祭的なテンションが漲っているのだ。もちろん今のアメリカは決して祝祭をあげるような状況にはないだろう。それでも、人に宿る魂だけはより高みを目指して旅を続けていけるよう、そんな願いがこめられた音楽だと思う。
おすすめ度★★★★☆(13/06/09)