NYはブルックリン出身のGrizzly Bearの3rd。Radioheadの前座を務めていたこともあるらしく、かねてより新作を待ち望まれていた注目のバンドである。
一聴した感じでは、ミドル~スローな曲を中心としたソフト・ロックという印象を持ったのだが、聴けば聴くほど味わい深く、また違った側面を見せるというなかなかおもしろい作品である。
アコギのフォーキーな調べから、トライバルなアンサンブルへと展開してゆくオープニングのSouthern Point。次のTwo Weeksはシンプルで美しい歌とピアノのリフ、絶妙なコーラスワークは単に「美しい」というよりは「荘厳」という表現の方が合う。1曲1曲の中で構成の振れ幅がすごく大きいのが特徴的。
メロディーはポップで美しいものが多いのだが、メロディーよりも幾重にも重ね塗られたバックトラックが秀逸。ストリングスやエレクトロなど様々な要素をセンス良く組み立てながら、聴いたことがあるようでない、どこか浮世離れしたような音的空間を生み出している。このサウンド全体に醸し出される神秘性は、あのFleet Foxesを彷彿とさせる。
見る角度によって、時に開放的でありながら、箱庭的な内省さも見せるような万華鏡的サウンドスケープが個人的にはとてもツボ。
そして、特筆すべきは歌詞。止まらない崩壊を続ける世界をコラージュしたようなその内容は、自分たちが直面している事態そのものだと気づかせてくれる。と同時に、ならば自分に何ができるのかを深く問いつめるようなところもある。答えがあるのかないのか、それさえもわからないのだけど。
さぁ、また始めよう
ぼくらは進んでいく 我が唯一の友人達よ
このひとつきりのチャンスに賭けるつもりだ
でも妥協は一切なし
他に残っていないから 試せる道は
さぁやるぞ
ぼくらは続けようとする しかしまたも
これ以上は無理
形をなさないまま物語は進んでいく
まるで ぼくらがそもそもそこにすらいなかったかのように
Hold Still
おすすめ度★★★★(07/06/09)