The Spinning Top/Graham Coxon | Surf’s-Up

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 Blurへ劇的復帰を果たしたGraham Coxonのソロ7作目。「もうそんなになるのか」と意外な多作ぶりに驚いたのだが、今回も創意に満ちたすばらしいアルバムを届けてくれた。


今作はある男の一生を描いたコンセプトアルバムとなっている。そして、アコースティック・ギターを主体としたハンドメイドな作品となっている。一足先にリリースしたピーター・ドハーティーのソロアルバムにも全面参加していたグレアムであるが、そのピーターのソロもアコースティックなサウンドが主体であった。でも正直、グレアムのアコースティック・アルバムというのは最初どうもピンとこなかった。


 それは、僕の中のグレアム像は「ギターという楽器の表現力がいかに幅広いのかを証明し続けてきたアーティスト」だというところからきている。Blur時代を含め、ラフな手触りのものからポップな歌を聴かせるようになった最近のソロまで、多彩な音色を操ってきたグレアム。ギターという楽器の無尽蔵な可能性をいつも引き出していた彼のスタイルを考えると、アコースティック・ギターというのは少々縛りがあるような気がしたからだ。


 しかしながら、それは凡人の全くの杞憂であった。グレアムはこのアルバムでも見事にグレアムであった。優しいメロディー、フォーキーでブルージーなテイストの曲が増えたものの、グレアムのギターはいささかも曇ることなくきらめき続けている。アコギの音一つでも実にいろいろな顔を持って響いてくるのは彼の創作力のすごさの表れだろう。


 今作は、自分が最近よく聴くということで、こういうスタイルの曲が多いわけだが、ポップなメロディーは健在。柔らかなメロディーにぬくもりを感じるIn The Morningや、ロック色の強いDead Beesなどバラエティーにも富んでいる。また、グレアムの優しげなヴォーカルとこのサウンドの相性も実によい。


 決して派手さやグラマラスな魅力はないが、グレアムの誠実さとでも言うか、一つの音楽として非常に「確かなもの」を感じるアルバムである。この才能がまたBlurに帰ってきたことも大きいが、ソロとしての彼の活動もまだまだ続けてほしいのも本音である。


 おすすめ度★★★★(05/06/09)