The Virginsのデビューアルバム。NY出身の3ピースバンドで、人気ドラマの挿入歌にバンドの曲が利用されたことにより、人気に火がついたとのこと。
すごく平たく言うと、ipodのCM音楽集とでも言おうか、ポップ&ファンクを基調とした耳なじみの良いアルバムである。80'sテイストが色濃く、当時のニューロマンティック当たりのサウンドを彷彿とさせる。カッティングの軽さ、チープな音色のシンセなどあの頃の黄金律とも言うべき必殺技をいくつも繰り出してくる。
ポップなファンクナンバーRich Girlsはもういかにもな感じであんまり好きではないのだが、She's Expensive、One Week of Dangerのような荒削りでロックよりなナンバーは実にかっこいい。そして、一番の驚きはとにかく曲のキャッチーさが半端ではないこと。「一度聴いたらしっかり耳に残る」というありがちな文句が実にぴったりとはまる。しなやかなグルーヴを描きながら、キッズの心をわしづかみにする力のある曲をこれだけそろえたのはすごい。
1stでここまでクールで隙のないポップアルバムを作ったバンドとして、ついフランツ・フェルディナンドを想起してしまうのだが、フランツほどの確信犯的な要素はなく、どちらかいうと無邪気に自分たちのやりたい音を楽しんでいる感じ。むしろ僕はそこに好感を持った。聴き手との微妙な距離感を保つことで、いつまでも刺激的であろうとするフランツに比べると、そういう衒いがない分いささか線が細いようにも思えるが、逆にポップをまとったリアルな部分がより伝わってくるような気がする。歌詞も女の子のことを歌っているようで、その享楽の裏にある閉塞感や失望感を感じさせるところがある。なので、是非とも歌詞にも注目してほしい。
ただ、ちょっとどうしても許せないことがある。それは日本盤のコピーにある言葉。「NYのお洒落セレブの間で人気爆発!!」・・・あぁ、もう死ぬほどひどいコピーだ(笑)。本当かもしれないが、頼むから勘弁してほしい。これは明らかにセレブ向きの上っ面の良い音楽ではない。実に誤解を招きやすい言葉だ。
おすすめ度★★★★(09/05/09)