Nights Out/Metronomy | Surf’s-Up

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 エレクトロ・ダンス・バンド、Metronomyのアルバム。 新人ながら、あのSNOOZERでは年間ベストアルバム第1位、NMEでも第6位とまさにシーンでは2008年を代表したアルバムとして、大きく取り扱われている。


 具体的にどういう音かというと、軽いタイプのエレクトロ・ポップ。よく言われているように重厚な音圧でガンガン鳴らすステレオタイプなエレクトロとは真逆を行っているような音である。シンセ、ブレイク、ビート全てがポップな感じで、骨格としては線が細い感じ。しかし、そのか弱い感じこそがこのバンドの肝である。


 儚い叙情性、メランコリックさを伝えるのにたいていのバンドはメロディーによる表現を選ぶのに対して、Metronomyは音の断片とか無機質にループするビートでそれを伝えようとしている。「伝える」というよりは、自然発生的に鳴っているのだろうが、非常にダイレクトに聴き手の感情を揺さぶってくるのだ。


 ベッドルームで大暴れしているような内弁慶な享楽性だったり、「Reel Around The Fountain」のようにダンスフロアでふと感じる孤独感であったり、本当は誰しもが抱える感情を絶妙のセンスで表現している。


 何か新しい手法を得た、発見した時のプリミティヴなパワーは底知れないものがあるし、事実それがロックの  歴史を塗り替えてきた。Metronomyを聴いていると、かつてのテクノが産声を上げた時代に鳴らされたような、瑞々しさを感じる。何かと出尽くした感のある時代の中で、久しぶりに「新鮮さ」を覚えた。


 正直言うと、初めて聴いたときはこれといって特別な感想を持たなかった。でも、3回目繰り返して、やっとこの音の凄みに気づいた。単純に「これ知っているとおしゃれ」という類のものでは絶対にない。現代の生活に漂う「空気感」をジャストに表現したアルバム。


 おすすめ度★★★★☆(22/02/09)