Tonight:Franz Ferdinand | Surf’s-Up

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 Franz Ferdinand、渾身の3作目。インターバルが4年。その間に吹いていた彼らへの風は、今は「無風」状態といってもいいだろう。ポストパンクの定義の幅がどんどん拡大し、Arctic Monkeysなど個性的な質感を持ったバンドがどんどん出てきた今、「ダンサブルなポップ」という彼らの武器がどれだけ通用するのか。


 結果的に言うと、彼らはそういう聴き手の安い不安感を一蹴するような素晴らしい作品を作ってくれた。地に足の着いたアルバムというか、自分たちの表現、音楽性と真っ向勝負を挑んだような、格闘の後がみられるアルバムとなった。


 リードトラックであるUlyssesは、一聴した感じでは地味な印象。特徴である中毒性を持ったリフやコーラスも抑え気味。続くTurn It OnやNo You Girls Never Knowは王道フランツであるが、そこに落ち着くことはなく、様々な冒険を試みている。


 大胆にシンセを導入したTwilight Omens、Live Alone、Can't Stop Feelingはめちゃめちゃディスコティックだし、Send Him Awayは終盤のリズムの変化がおもしろい。サイケ風ポップのDream Againも新境地だと言えるだろう。そしてラストはアコギで渋く歌われるKatherine Kiss Me。なんと意外なナンバーでアルバムは終わりを迎える。


 ポップなメロディー、強烈なフックを持ったサビなど、フランツサウンドは健在なものの、前作までのような派手さはあまりみられない。シンセの多用や、様々なタイプのビートなどサウンドとしてはむしろ幅が広がっているし、その分きらびやかになりそうなものなのだが、むしろ逆に1曲1曲タイトに仕上がっているようにみえる。見え見えの張りぼてをあしらうのではなく、サウンドの焦点化に見事に成功したポップアルバムだ。



 おすすめ度★★★★☆(25/01/09)


Ulysses