Tahiti80の新作。最近ソロ活動がメインとなっていたグザヴィエであるが、そこである程度自分の実験性を放出したのか、このアルバムでは実にシンプルなアプローチをしているなという印象を受ける。
雑誌なんかでは「ロック色が強い」ようなことが書かれていたが、さほどロックな感じはしない。どちらかいうと全体的にざっくりとした風通しの良いポップで構成されている。
このバンドにおいては、キャッチーでポップなメロディラインはもう当たり前のこと。ただ、これまで売りでもあった特徴的なシュガーコーティングはほどほどにして、素材の良さで勝負しようという今回のプロデュースは成功だと思う。ともすれば近作で感じられた過剰な甘さがとれたように思う。もちろんこれは好みの問題であるが、個人的にはこれくらいすっきりしている方が、このバンドの本質や良さが伝わるのではないかと思う。
ただ、これはジレンマであるが、その「すっきりさ」のために、強烈に耳に残る感じはやや後退した。いい曲揃いなのだが、聴き終えたあとにどことなく物足りなさがあるのも確か。あまりに淀みなくスマートなので、アルバムの流れに変化をつけるなど、そういう工夫があればなと思うところもある。
それでも、バンドの高いポテンシャルを十分に感じられるアルバムである。今のサウンドにポップの毒気が加われば無敵だろう。それは次への楽しみにとっておこうと思う。
おすすめ度★★★☆(18/10/08)
All Around