22Dreams/Paul Weller | Surf’s-Up

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 あまり話題にはなっていないようだけど、個人的には今年一番の「えぇー」なアルバム。

 ポール・ウェラー、御年50歳。ここまでキャリアを重ねたアーティストはたいてい大衆が期待している自画像をなぞらえたような作品を出すのがお決まりである。


 しかし、この新作「22Dreams」はそんな大衆の期待を一蹴する、冒険作となっている。


 まず持ってその形態。アナログなら2枚組の21曲入り。いわゆる大作であるが、そういった作品にありがちの重苦しさはない。21曲入りのモッズ・サウンドだったらちょっと厳しかったかもしれないが、この作品はポール・ウェラー版「ホワイト・アルバム」とも言うべき、バリエーションに富んだものになっているので、すんなり聞けてしまう。これまでだったら曲数を絞って1曲1曲の熱量を高めるような感じがあったけど、今作はとにかく自分の中にあるアイディアを全部さらけ出して作ったようなフシがある。


 もちろん、これまでのオーソドックスなモッド・ナンバーもあるが、耳に付くのはそれ以外のもの。

 ノエルとゲムが参加したEchoes Round The Sunは、重々しいビートにストリングスを絡めたサイケな1曲。これは文句なしにかっこいい。

 度肝を抜かれたのが、その後のOne Bright Star。超エキゾチックなメロディーを哀感たっぷりに歌うポール。まるで歌謡曲ですよ、これは。フランス人なんか好きそうだなぁ。伝わりますか?

 また、インストも多くて111のような音響的なナンバーも実に印象に残ります。


 なので、1曲1曲のインパクトが実に強い。そこが、このアルバムのすごいところだと思う。まとまりは正直ないし、アルバムとして考えるともったいないところもあるように感じる。それでも、そういう計算のなさがポール・ウェラーらしいなと。そして、めちゃめちゃ若いよ。職場にこんな50歳いないもんなぁ。


 おすすめ度★★★★(08/07/13)


Echords Round The Sun