Spiritualized5年ぶりの新作。肺炎をこじらせて、一時期は危険な状態に陥ったジェイソンであったが、回復し実に素晴らしいアルバムを作ってくれた。
まず、のっけからあまりのスペイシーぶりに驚く。いきなり「浮遊」するので、聴き手は覚悟してもらいたい。
ストリングスやコーラスをふんだんに使ったゴスペル調の曲が多めになっている。これらの曲は、前々作「Let It Come Down」に入っていても前々おかしくないくらいテイストが似ている。前々作が好きな人なら、絶対におすすめの1枚だ。しかし、前作「Amazing Grace」で披露したようなラウドなナンバーも織り交ぜられている。そしてまた、時折挟まれるインストが実にいい味を出している。聴き手にかみしめる余韻を与えてくれるのである。
しかし、一番の特徴は、シンガロングなメロディーが満載であるというところだろう。ライヴなんかでは合唱するシーンがたくさん観られると思う。とにかく今回のspiritualizedは口ずさめる。元々ソングライティングの力は半端ないくらい高いが、ここまで歌メロを中心に据えた作品を出したのは初めてだろう。そして、今作光っているのはジェイソンの歌声である。ギリギリのところで絞り出すように歌われる、その声がとてもよい。最近、アコースティックライヴをしていたようだが、なるほどと頷けるくらいこのアルバムのジェイソンは「枯れて」いる。メロディーが極上なだけに、より味わい深く響くのだ。
ただ、これまでの作品にかいま見られた、オーバー・ザ・トップな感じはない。「ぶっとぶ」というところまではいっていない気もするが、「ヤバイ」雰囲気は十分に醸し出している。そこで評価が分かれるかもしれないが、個人的にはストライク。
おすすめ度★★★★☆(6/6/08)