曽我部のソロキャリアの中でも最高傑作だろう。
曽我部恵一バンドのライブはすごい。しかし、そのすごさを説明するのは難しい。元となる音源がないからだ。
そしてこのアルバムは、ライブでこそ感じられた「熱」を感じられる作品となっている。これは実にありがたい作品だと思う。
メンバー全員が30代で既婚者。キャリアも短くないのに、ロックンロールを演奏する喜びに溢れている。とにかく楽しそう。曽我部も細かいことは気にしないように、歌い演奏している。曲によってはキーが外れていても、ハスキーな声を振り絞るように歌う。なんてこと無いような内容でも、全力で歌う。
そこがまず素晴らしいなと思う。一生懸命なことは決してかっこわるい事じゃない。
かつては文学性の高い歌詞を書いていた曽我部も、ここにきてとてもシンプルな表現をするようになった。「チワワちゃん」という曲は、病気になったチワワにハルコちゃんが手紙を書く。それがかわいいな、という曲。ただそれだけの曲だ。ストレートにもほどがある、そんな声も聞こえてきそうだ。
「たったそれだけ」のこと。人にとっては取るに足らないことなのかもしれない。
しかし「たったそれだけ」のことであることに何の罪もない。それの一体何が悪いのか?世の中は「たったそれだけ」のことで溢れかえっている。思うんだけど、「たったそれだけ」の事をどれだけ鮮やかに表現してみせるか、または「たったそれだけ」の事にどれだけ喜びを見いだせるか、これは自分の人生を生きる上でとても大きな事だと思う。
人生において、ささやかな喜びの瞬間。「たったそれだけ」のことが、曽我部には「キラキラ!」しているように見えるのだろう。そしてそれを見事にシンプルな言葉と甘いメロディー、フルテンションの演奏で描き出すことができるのだ。もうまいった、文句の付けようがないです。
おすすめ度★★★★★(4/25/08)