子供を動かす言葉の使い方 | 心理カウンセラーの魔法の子育て

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心理カウンセラーから見た子育てのポイントと、ただの日記。NLPやコーチング、潜在意識など、最新の心理学理論を子育てに活用しましょう。

朝、8歳の娘の横で寝ていると、妻の声がします。

「のんちゃん。起きるんよ。朝やで~。」

数分後

「のんちゃん、もう起きよ。7時なってるで~。」

数分後

「のんちゃん! ほらもう7時10分になってるよ。起きなっ!」

数分後

「ほら、のんちゃん!! もう7時15分になったよ!!あんた間に合うん!?」


と除々に緊迫してくる妻の声で、僕が目覚めるわけですが…(笑)

どこのご家庭でも毎朝繰り広げられている光景だと思います。

そして当の本人はまだ布団から出る決心がつかないようで、眠そうに目を閉じてグズグズとしています。

そこで、私は少し違った言葉の使い方で娘に声をかけてみました。すると娘はスッと布団から起きだして朝の準備を始めました。

何度「起きなさい!」と言われても起きない娘を動かした言葉とは、いったいどんな言葉だったのでしょうか?

特に変わった提案をしたわけではありません。当たり前のことを少しアレンジして、人の無意識に作用しやすいように作り替えただけです。

その言葉とは次のようなものです。

「のん。あっちの部屋に行って、ストーブのスイッチ押して、ストーブの前に座っとき。そしたらだんだん目が覚めてくるわ。」

この言葉をかけられる立場で聞いてみてください。ただ単に「起きなさい!」と言われるより少し動きやすく感じませんか?

ではなぜ「起きなさい!」ではダメで、この言葉だと動きやすくなるのでしょうか。

簡単に原理を理解しておきましょう。

【イメージできた時に無意識は動き出す】

「起きなさい!」という言葉で子供達が動きにくいのは、その言葉では意味の固まりが大きすぎるからです。

「起きなさい!」という言葉で実際に起き上がるためには、頭のなかで

「起きなさい!」を「布団から出て、隣の部屋に行って、顔を洗ったり着替えたりすること。」のような細分化したイメージに変換処理する必要があります。

意外に高度でクリエイティブな情報処理だとは思いませんか?

幼い子供にはなおさらです。

子供たちはお母さんの言うことに従う意志はあっても、メッセージを細分化する技術がまだ備わっていないことで動けないことが多いのです。

そこで親である私達が、具体的にどう動いたらいいのかイメージできるレベルにまで細分化して伝えてあげるわけです。

そうすると子供は、自分で細分化する必要が無いので動きやすくなります。

それ以外にもこの言葉の使い方には2つの特徴があります。


1)一度に3つ以上の命令を含めると、どの命令に対して抵抗すればいいのか判断するのが面倒になり、その結果、無意識は命令に従う方を選ぶ。

これは天才的な心理療法家ミルトン・エリクソンが使った語法です。面倒なことを避けようとする無意識の性質を逆に利用したテクニックです。

今回の場合は、「あっちの部屋に行きなさい。」と「ストーブにスイッチを入れなさい。」「その前に座っておきなさい。」の3つの小さな命令を伝えているわけです。


2)メッセージの最後に「快」になる暗示を付け加えていることで、動機付けをしている。

今回の言葉だと、「だんだん目が覚めてくるわ」というのがそれです。

以上の原理を理解して、ケーススタディをしておきましょう。

【どんな言葉も魔法の言葉に言い変えられる】

「早く宿題しなさい!」「早く着替えなさい!」「早くお風呂に入りなさい!」「早く寝なさい!」

こうして私達が日常的に子供達に与えているメッセージを振り返ってみると、大人では動けても、子供達にとっては意味の固まりが大きすぎことに気づかれると思います。

では、先の原理に従って、どのように言い変えられるでしょうか。

ポイントは

1)行動がイメージできるように3つに細分化する。

2)最後に「快」を暗示する。

です。

例えば「宿題しなさい!」だと以下のように伝えます。


「◯◯ちゃん。今日の宿題は何が出てるの?」

「算数の計算ドリルと、音読。」

「ふ~ん。じゃあ、ランドセルから計算ドリル出して、ここに持ってきて、問題解こうよ。先に宿題終わらせたら気持ちいいし、◯◯ちゃんの好きな遊びができるよ。

解説すると

「じゃあ、ランドセルから計算ドリル出して(命令1)、ここに持ってきて(命令2)、問題解こうよ(命令3)。先に宿題終わらせたら気持ちいいし、◯◯ちゃんの好きな遊びができるよ(快の暗示)。」

となり、子供の頭のなかには「快」に行き着くための道筋がイメージできているわけです。

次は、

「お風呂に入りなさい」



「ここで服脱いで、裸になって、お風呂につかりなさい。よーく温まって、そこで2人で遊んだらいいよ。」


次は

「早く寝なさい!」



「あっちの部屋に行って、布団に入って、ぬいぐるみと一緒にぬくぬくしとき。だんだん気持よーくなってくるよ。」

コツは掴めてきたのではないでしょうか?

ただし、これらの言葉は単に子供に投げかけるだけでは動きません。しっかりとまずお子さんの名前を呼んで、こちらを向かせてあらたまった状態で、子供が頭の中で1つ1つのシーンをイメージしているのを確認するように、ゆっくりと伝えてあげましょう。

そうすると、子供の無意識の中に行動するためのイメージの道筋ができあがります。

それでも動かなければ、

「こらっ! ええかげんに風呂入らんかい!! 何時やと思とんねんっ!!」 

って感じで、背中を押してあげましょう(笑)

【最後に】

こういったメッセージの伝え方は、動きやすくなる反面、子供の自主性を奪うのではないか?

指示待ちで受け身な人間になってしまって、自分で考える力を奪ってしまうのか? と心配される方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん、いつまでもこういったメッセージを出し続けるのは考えもので、やがては子供達が自分自身の中でメッセージを細分化し、自分で自分を動かす言葉やイメージを生み出すスキルを身につけて欲しいものです。

そのために親ができるサポートは、質問を使って子供自身から答えを引き出す「コーチング」という手法になります。

それはまた別の機会にお伝えするとして、小学生の低学年くらいまでは、成功体験を積ませてあげることに集中してあげてください。

「何度言っても、言うことを聞かない子」「グズグズする子」だと思っていたお子さんも、実は意味の固まりの細分化につまづいているだけで、メッセージを工夫してあげると、素直に動ける子なのかもしれません。