Kingsmanで登場するこの台詞について深掘りしていきたい。(凡例 英語、字幕、吹替え)
"Oxfords, not brogues.(ブローグではなくオックスフォード)"
(吹替え:ウィングチップではなくオックスフォード)
下記動画内、0:24
この台詞が登場するのは映画冒頭、コリンファース演じるハリーハートがエグジーの母親に勲章を渡すシーン(作中3:30)、エグジーが警察署勾留中に電話をかけるシーン、そして上記動画でハリーがエグジーにキングスマンの秘密道具部屋を案内するシーン(作中1:6:50)である。
ハリーはこの言葉を"Words to live by(合言葉/人生の指針)"と言っている。
私は「ブローグで飾らずオックスフォードのようにシンプルかつフォーマルに生きるべし」といった格言だと考えている。
ここで、オックスフォードとブローグ、吹替えのウィングチップについて定義を細かい用語抜きで確認していきたい。
まずオックスフォード。これはこんな革靴を指す。(参考①)

注目すべきは、その靴紐の部分。靴紐がついている部分は靴側面部と縫い目で分かれており、その部分は側面部よりも内側(下側)に縫い付けられている。
これを内羽根(closed lacing(lacingは靴紐))という。(反対は外羽根。open lacing)
比較画像がこれ。見れば一目瞭然である。印象としてオックスフォードの方がフォーマルな印象を受けるのではなかろうか。Derbyはカジュアルなデザインである。
(参考②)

それともう一つの注目点は、爪先だ。一般的にシンプルなデザインで、1枚目のように縫い目などなし、または2枚目のように横に一本入っている。
(ただ、ブラントによりけりなところもあるのでちゃんとした定義はなさそうだが・・・。)
次にブローグ(brogue)
これは靴の先端の穴飾りを指す。下図の穴装飾のことである。
これらが施された靴をブローグシューズという。(参考③)

最後にウィングチップ。(参考④)
これはつま先の意匠がW字になっているものだ。上画像のように正面から見ると、Wの切り返しがついている。鳥の羽根Wingのように見えることからそう呼ばれる。だいたいのデザインは穴飾り(ブローグ)とセットである。
ここまで読んで、あれ?と思った方がいるのではないだろうか。
オックスフォードは靴の種類
ブローグは穴飾り
ウィングチップはつま先の切り返しの意匠
そう、これら3つは同列で比較すべき項目ではないのである。
(例えは下手だが、果物と種ありとブドウを比較しているような感じ?)
今一度映画内のセリフを見返してみよう。
"Oxfords, not brogues.(ブローグではなくオックスフォード)"
(吹替え:ウィングチップではなくオックスフォード)
・オックスフォードはたしかにシンプルなものをさすが、ブローグ付きのオックスフォードも存在する。
・吹替えの表現は、ウィングチップとオックスフォードは確かに共存はしないだろうが、同列のものの比較出ないのでどこか変なセリフになってしまっているのだ。
ここはOxfords, not brogues.の語感を優先したのだろうか、謎である。。。
それと作中のハリーのセリフにも一つ誤りがある。
この誤りは英語verのみで確認できる。上述の動画内ハリーがエグジーにキングスマンの秘密道具部屋を案内するシーンでこう言っている。
①オックスフォードシューズを指差して
"An Oxford is any formal shoe with open lacing."
(オックスフォードはフォーマルな紐靴。)
(オックスフォードは万能なフォーマルシューズで紐がついている。)
②べつの靴を指差して
"This additional decorative piece is called broguing"
(この穴飾りは"ブローギング)
(この飾りを施したやつはウィングチップと呼ばれてる。)
①で"An Oxford is any formal shoe with open lacing(筆者訳:オックスフォードは外羽根(open lacing)のフォーマル靴)"と言っている。しかし、オックスフォードの説明で解説したようにOxfordは内羽根(closed lacing)なのである。なぜこんな間違いが起きたのかわからないが、これは明らかに間違っている。
ちなみに、映画中映る靴は①でOxford靴(もちろん内羽根closed lacing)と②で内羽根ブローグ付きウィングチップ靴である。日本語訳は字幕・吹替えで台詞が違うが表現としてはあっていると言えるのである。
まあ、ここまで細かい定義に基づいて間違いを指摘してみたが、この映画でそれをするのはナンセンスかもしれない。
この映画は、英国紳士が格好良くスーツを着こなし、ど派手に闘う非常に楽しめる格好良い映画なので、まだ見ていない方はぜひ見ていただきたい。そして、観る際は作中の英国紳士ファッションに要注目!である。
(作中使われている靴は1958年にイギリスで生まれた靴のブランドGEORGE CLEVERLEY(ジョージ クレバリー)。(参考⑤特設サイト))
また、他にも多くの素晴らしいイギリス革靴メーカーがある。
EDWARD GREEN/JOHN LOBB/Church’s/CROCKETT & JONES/JOSEPH CHEANEY/Tricker’s/Alfred Sargent/SANDERS/GRENSON/GAZIANO & GIRLING/Loakeなどである。ぴかぴかの革靴を眺めるだけで楽しめると思うので、ぜひいろいろ調べてみてほしい。(参考⑥)
ちなみに、英国諜報部に勤める007はCROCKETT & JONESの靴を着用しているようだ。(No Time To Die)(参考⑦参照)
本日はここまで。靴の世界は奥深く、まだまだ入り口だ。
今後もし機会があればまたこの話題で記事を書きたいと思っている。
感想などいただければありがたい。
以下、参考サイト
①オックスフォードとは
②Open/closed lacingの比較
③ブローグシューズとは
④ウィングチップとは
⑤ジョージクレバリーとキングスマン
⑥イギリス革靴ブランド
⑦007の愛用靴はCrockett & Jones




